【夢中論】佐藤浩市“役者歌” 実はライブ歴10年 原田芳雄さんに口説かれ…

[ 2017年10月3日 11:30 ]

夢中論 佐藤浩市(上)

お気に入りの原田芳雄さんのレコードジャケットを手にする佐藤浩市
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 俳優の佐藤浩市(56)は、ライブステージに立ち、ブルースを歌う。親交があった俳優で歌手の故原田芳雄さんに誘われたのがきっかけだったが、最近、その楽しさが分かってきた。歌うことは役者の一部であり、役者の奥行きを広げるものでもある。今年は長男の寛一郎(21)が俳優デビュー。人生がますます深まっている。

 歌うはブルース。情感たっぷりで、重々しい。流行の軽いポップスとは違い、大人の渋みがにじみ出る。

 ♪ブルースで死にな ブルースで死にな 恥をさらすなら その前に…

 阿木燿子作詞、宇崎竜童作曲の「ブルースで死にな」。原田芳雄さんの4枚目のアルバム「OH!YEAH!!BLUES PARADISE」に収録されている。これが佐藤のライブレパートリーの一曲だ。

 「僕の歌は、歌手の歌とは違います。演技に近い。セリフを言うように歌ってます。要するに“役者歌”ですよ」

 初めて観客を前に本格的に歌ったのは10年近く前だった。原田さんに「浩市、ライブに出ろよ」と誘われた。最初はちゅうちょしたが「浩市、歌はいいぞ。無責任に楽しい」と口説かれ、思い直した。ライブハウスで原田さんらとともに歌ってみると、手応えがあった。

 「声の出し方は腹式で役者と変わらない。自分で言うのも何だけれど、おかげさまでピッチ(音程)はありました。キー(音の高さ)も芳雄さんの原曲のままいけた。最初は緊張で気分が悪くなるほどだったけれど、続けていくうちに芳雄さんが“楽しい”と言う意味が分かるようになった。客席もよく見えて“どんな顔をして聴いてるのかな”とか“あいつ、俺のことを全然見てないな”とか、歌いながら思ってます」

 大腸がんだった原田さんは2011年7月19日に71歳で死去。翌12年2月29日(うるう年の原田さんの誕生日)、都内で行われた追悼ライブに参加した。その後、うるう年以外にも行われているライブに出演し続けている。

 「そこから得ているものは、確実に何かあるでしょう。ライブで歌うなんて自分からは最も遠いことだと思ってたのに、それをやっているわけですから、自分自身の細胞に何らかの変化が起きているはず。人前で歌うことを面白がれる。臆することがなくなっていく。より肝が据わった。そういう部分はあると思います」

 ブルースを歌うことで役者としてまたひと回り大きくなった。

 ◆佐藤 浩市(さとう・こういち)本名同じ。1960年(昭35)12月10日、東京都生まれの56歳。80年、NHKのドラマ「続・続 事件 月の景色」でデビュー。81年の映画「青春の門」でブルーリボン賞新人賞。94年の映画「忠臣蔵外伝 四谷怪談」と昨年の映画「64―ロクヨン―前編」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞。最近のドラマではTBS「LEADERS」(14年)、テレビ朝日「ハッピー・リタイアメント」(15年)などに主演した。

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