自他ともに認める“武将顔”平岳大 いつか海外で輝く

[ 2017年8月20日 10:30 ]

俺の顔 平岳大

鋭い眼光でカメラを見据える平岳大。自他ともに認める“武将顔”だ
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 時代劇の武将役がはまる“武将顔”の俳優・平岳大(43)。昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」で演じた武田勝頼が話題になり、26日公開の映画「関ケ原」では猛将の島左近役で存在感を示している。米国留学や会社員生活を経て、俳優デビューしてから15年。目指すのは、海外での活躍だ。

 1メートル83、74キロの大柄な体格も手伝い、武将を演じるのにぴったりの迫力と貫禄。「この怖い顔だから役を頂けたのかなと思う。妻にも家で普通にしているのに“怒ってる?”って聞かれます」と明かす。ドラマや映画で演じてきた武将は、徳川慶喜や武田勝頼ら名だたる人物。「生まれてくる時代を間違えたかな。あの時代に生まれてきたら出世しただろうな」と笑った。

 「関ケ原」で演じる島左近は、石田三成(岡田准一)の右腕として関ケ原の戦いで勇猛果敢に戦う猛将。三成が豊臣秀吉に義を貫く姿に心服し、軍師として仕える。「左近は自分が納得しないと誰にもついていかない。僕も孤独でも気にしないので、そういうところは似ていると思う」。

 昨年8月から約3カ月間撮影。猛暑の中、甲冑(かっちゅう)姿で山野を駆け、「大変でしたけど、撮影中はアドレナリンが出てるんでしょうね」と乗り切った。

 思わぬハプニングから名場面も生まれた。合戦中に息子の信勝に「ひたすら駆けよ!」と言う親子の重要なシーン。大切に演じようと臨んだが、負傷した設定で腹部を包帯できつく巻きながら大声で叫んでいたため、貧血のような状態になりセリフが出てこない。原田眞人監督(68)から「セリフを言え!」と怒声が飛び「死ぬ気で言ったんです。これは駄目だろうなと思ったら作品に使われていて、(監督の息子で編集の)原田遊人くんが“演技ではなく、平左近が死ぬ気で言っているのが良かった”と言ってくれた。戦場のシーンだったから、結果的にリアリティーが出たのかもしれない」と振り返った。

 左近が三成の配下に入る際の「天下悉(ことごと)く利に走るとき、ひとり逆(さか)しまに走るのは男として面白い」など重要なセリフを託され、“平左近”がスクリーンに強烈な印象を残している。「台本を読んだ時から監督が何年もかけてつくったと分かり、気合入りまくりの作品でした。いい組に入れてもらえたと思います」と感謝した。

 高校から米国に留学し、ブラウン大学からコロンビア大学大学院に進学したエリート。会社員生活を経て02年、27歳の時に舞台「鹿鳴館」で俳優デビュー。昨年7月に同い年の一般女性と結婚した。

 「結婚するまでは自分一人だったらなんとか食べていけるので、好きなことをやっていけたらいいなという感じでした。毎日、吉牛(吉野家の牛丼)でもいいので。だけど結婚してから責任感というか、ちゃんとしないとやばいなという思いがあります」

 俳優の故平幹二朗さん(享年82)と女優・佐久間良子(78)の長男。84年に両親が離婚し、双子の妹と共に母の元で育った。「鹿鳴館」は両親が離婚後初めて共演した舞台。俳優転身に両親は当初反対したが、熱意に折れ、父は一緒に朗読の稽古をするなどサポートしてくれた。その父が昨年10月に亡くなって、もうすぐ1年。

 「正直、父親が死んで初めて大人になったという実感はあります。子供の頃からずっと一緒に暮らしていたわけではないけど、会ってなくても存在としてはでかかったんだなと思います。父の家の物理的な整理とか、自分の心の片付けは1年くらいかかりましたね。やっと最近、自分の道をこれから探して広げていかなきゃいけないと思っています」

 模索する「自分の道」とは、10年間の米国生活や堪能な英語を生かし、海外で活躍する日本人俳優の一人となること。「渡辺謙さんがいて真田広之さんがいて、どんどん続いていかないと。途中で止まっちゃいけないと思うので、その一コマにでもなれればいいなと思います」と語った。

 ネコ好きで、実家で飼うネコとはおしゃべりもできるという。「おはようって言うと、(ネコも)おはようって言うんです。本当ですよ」。武将が似合う“怖い顔”が、優しくほころんだ。

 ≪父は見ていてくれた≫幹二朗さんは生前、息子の出演作品はほとんど見ていたという。「関ケ原」の出演も伝えており、「これを見てから逝けばよかったのに…。それを言ったらきりがないんですけど」としみじみ。「父が死んだ次の日にオープニングカットを撮ったんです。そういう意味でも忘れられない作品になりました」と思い入れを語った。

 ◆平 岳大(ひら・たけひろ)1974年(昭49)7月27日、東京都出身の43歳。高校1年の時に渡米し、10年間米国で生活。02年に舞台「鹿鳴館」でデビューし、蜷川幸雄氏演出のシェークスピア劇「ハムレット」や古典劇「フェードル」のほか歌舞伎にも出演。主な出演作はドラマ「篤姫」「下町ロケット」、映画「のぼうの城」「おかあさんの木」など。原田眞人監督の次回作「検察側の罪人」(来年公開)にも出演。特技は乗馬、殺陣、フラメンコ。

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