トリ年なので

[ 2017年1月29日 08:30 ]

ウワサのトリ人間。もちろん「トリ」ミングしています
Photo By スポニチ

 【我満晴朗のこう見えても新人類】東京・上野の国立科学博物館で開催されている特別展「世界遺産 ラスコー展」を鑑賞してきた。

 圧巻だった。約2万年前にクロマニョン人がフランス南西部の渓谷にある洞窟内に描いた壁画の数々が忠実に再現されている。

 そう、展示品のほとんどは模造品だ。本物の洞窟を移送するのは物理的に不可能だし、なによりも壁面の損傷が激しく、現在は非公開にせざるを得ない状況という。まあ、失礼を承知で言えば偽物だ。トランプ米大統領なら「FAKE!」と叫んで一顧だにしないかもしれない。でもこの特別展、一見の価値は確かにあった。

 黒い牝馬、泳ぐシカ、背中合わせのバイソンなどなど…当時生息していた動物たちが生き生きと描かれている。今にも動きだしそうな構図、まさに写実的と言うべきか。真っ暗な洞窟の中でわずかな明かりをともしながら丁寧に描いたのだろう。2万年の風雪に耐えながら消えることなく現代に残っているのだから、絵心はもとよりその技術力はひたすら高い。

 ため息をつきながら順路を進んでいくと、「井戸の場面」で不思議な絵画が目に留まった。どうもバイソン狩りの場面のようなのだが、他の作品?と趣向が異なる。腹から腸が飛び出して瀕死(ひんし)のバイソンからあらん限りの反撃を受け、倒れかかっている人物が描かれている。いや人物なのか?頭部や両手の形状をよく見ると、過剰なダイエットを敢行してやせこけたペンギンのようにも見える。

 特別展での説明は「トリ人間」。ヒトはその頃、鳥だったのか…と、なぜか中島みゆき的思考に陥る。ラスコー壁画の中でも人物に相当する図はこれだけだとか。描き手のなんらかな意図が込められているはずだ。

 ちなみに人物の下方にはトリらしき図もあるが、これはヤリの投てきを補助する特殊な用具を示しているらしい。

 帰宅後、公式ウェブサイトにアクセスする。当該の場面は「傷ついた人」というタイトルがついていた。やっぱり人間?ならば、トリの姿をしているのはなぜ?

 そんなわけで正月早々、想像力だけはたくましくなった。たまにはこの種の博物館巡りも悪くない。気に入ったのは一部展示物を除き撮影が可能ということ。ストロボや三脚の使用はできないけど、先ほどの「トリ人間」も写真トリ放題だ。カメラを持参して謎解きとしゃれてみるのもトリあえずおすすめです。(専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。

続きを表示

2017年1月29日のニュース