「真田丸」小林顕作「売れる気ない」も…オフロスキーが運んだ宝くじ

[ 2016年10月8日 08:00 ]

大河ドラマ「真田丸」で明石全登を演じる小林顕作(C)NHK
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 NHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)が最終章に近づいてきた。2日放送の第39話「歳月」は、幽閉された九度山(和歌山)の生活に慣れ、穏やかな日々を送る主人公・真田信繁(堺雅人)の前に、謎の使者が現れた。豊臣軍が大阪城で徳川軍を迎え討つべく、元宇喜多秀家(高橋和也)家臣・明石全登(てるずみ)が信繁を招きに訪れたのだった。のちに「大坂五人衆」と呼ばれるキーマン・明石を演じるのが、NHK・Eテレ「みいつけた!」(月~金曜前7・45)のオフロスキー役で知られる俳優・小林顕作(45)。「宝くじに当たったようなもの」と大河初出演を楽しむ小林に役作り、オフロスキー誕生秘話、仕事の流儀を聞いた。

◆明石全登は「ジュリーで」三谷脚本「間合いに重点」

 俳優、声優、脚本家、演出家、ダンサー、ミュージシャンとマルチに活躍中の小林。学ラン姿でおなじみのダンスカンパニー「コンドルズ」の旗揚げメンバーで、2009年4月期に始まった「みいつけた!」のオフロスキー役で人気者になった。

 そのオフロスキーが大河出演を導いた。ピンクの牛柄パジャマを身にまとい「よんだ?」とバスタブから現れ、毎回「こんなことできる?」と視聴者の子どもたちに挑戦してくるキャラクター。時代劇離れに危機感を感じ「時代劇はゴールデンタイムで放送されるべき」と“無駄な使命感”から「じだいげきだよ オフロスキー」という曲を作詞・作曲。自ら歌い、昨年1月から番組内でオンエアされた。

 これを「真田丸」の脚本・三谷幸喜氏(55)と家冨未央プロデューサーの2人が偶然、子どもと一緒に見ており、今回のオファーにつながった。「三谷さんと家富さんにお子さんがいらっしゃらなければ…。いろいろな偶然が重なりました。宝くじに当たったようなもの」と驚きを隠さない。「売れる気もない」と従来はテレビドラマに積極的とは言えなかったが「(オフロスキーを見て)そんなふうに(大河ドラマに出演してほしいと)思っていただける。こんなにうれしいことはないじゃないですか。ご縁なので、精いっぱいやらせていただきたい」と快諾した。

 三谷氏との初会話は新幹線に乗っている最中の電話だった。見知らぬ番号からの着信に勘が働き、出ると「三谷です」。小林が長台詞を2~3回噛んだ最初の撮影VTRをチェックしたらしく「ダメ、あんなんじゃ。硬い、硬い」「僕、何も言われていないので…」「伝わっていないかな?一応、キャラ設定、言ったんだけど」「ちなみにそれ、なんですか?」「『魔界転生』知っています?」「ジュリー(沢田研二)ですか?」「そう、ジュリー!もっとジュリーで!もっと妖艶でね。もうね、小林さん、この後、仕事ないと思うぐらいやってください」。いきなりの“ダメ出し”と演技指導を、おもしろおかしく振り返った。

 三谷氏は、歌手で俳優の沢田研二(68)が天草四郎時貞役を演じた1981年公開の映画「魔界転生」(監督深作欣二)をイメージ。三谷氏のアドバイスに、小林は「明石はキリシタンで賛美歌を歌ったり、祈りを捧げたりするので、声を張ってデカくしてみました」と役作りに生かした。「とにかく台本に書いてあることに忠実に。あと、九度山まで呼びに行って大阪に連れてくるというのは、信繁のことが相当好きなんだなと。その“真っすぐさ”は出していきたい」。明石はミサを優先することがあるキャラクターだが「本人は純粋なんですが、周囲から見ると滑稽。三谷さんから『分かる?』と挑戦されている気がして、ただのト書きにしても、そこは三谷さんの狙いを感じて、間合いに重点を置きました」と挑んだ。

◆「オフロスキー」誕生秘話、仕事の流儀「売れるより、おもしろいかどうか」

 NHK・Eテレ「みいつけた!」のパイロット版が制作された時、非常にかわいらしい番組になりそうだと評判もいい中、小林は「無駄なコーナーを作ってほしい」と呼ばれ「ちょっとイラッと来たんですが」と笑って思い返す。「よんだ?」というフレーズは作ったものの「衣装もバスタブという風景も、実は収録の当日までほとんど知らず。現場に行ったら、あの衣装があって。『どうしてバスタブに入っているの?』と聞きながら収録しました。僕も、自分で何が行われているのか全然よく分からなかったですね。とりあえず撮影して、名前も撮影が終わってから考えたぐらいでした」。オフロスキーは“流れ”で生まれたキャラクターだった。

 プロデューサーから「フロスキ(風呂好き)」という名前を提案されたが、得意の姓名判断で「オフロスキー」に。「字数で決めました。当時は本当に3カ月で終わると思っていました」というが、それも長く続き「今回の大河ドラマと一緒で、宝くじに当たったような気分です」

 「僕、その時に一番おもしろいものと思ったものしか、やりたくないタイプなので。オフロスキーも『こうしたら、きっとおもしろくなりますよね?』と“合わせ”に行っていたら、実は続かなかったような気がします。ただ純粋に、おもしろいと思ったことをやっただけなんだと思います。特に40(歳を)超えてから、好きなことしかしたくないというか。本当はそんなことじゃダメなんですが、その気持ちはずっとあった方がいいと思っています。こういうラインで行った方が売れるんじゃないかとか、そういうことは一切、考えていないです。人との関係性だけで、ご縁だけで仕事がしたい。その方が雑音がないというか。今、僕は非常に仕事がやりやすいです」。己の感性を純粋に追求してきた結果、大輪の花が咲いた。

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