押尾被告 遺棄致死罪、譲渡は「無罪」主張

[ 2010年9月4日 06:00 ]

初公判で弁護側の冒頭陳述を聞く押尾学被告(イラスト・河原崎弘司)

 合成麻薬MDMAを一緒にのんだ飲食店従業員田中香織さん=当時(30)=が死亡した事件で、保護責任者遺棄致死、麻薬取締法違反(譲り受け、譲渡、所持)の罪に問われた元俳優押尾学被告(32)の初公判が3日、東京地裁(山口裕之裁判長)で行われた。芸能人が被告となった初の裁判員裁判として注目が集まる中、押尾被告は遺棄致死罪、譲渡については「無罪です」と、きっぱりとした口調で否認。検察側との対決姿勢を鮮明にした。

 先月7日に発売された雑誌で「地獄の入口から戻ってやる」「死に物狂いで無罪を取る」などと記した獄中ノートが公開された。それらの言葉通り、闘う姿勢を打ち出した。罪状認否では、用意してきたメモを取り出し、麻薬取締法違反(押尾被告への譲渡)の罪で懲役1年の実刑判決を受けた友人の泉田勇介受刑者から「MDMAを譲り受けたことは認めます」としたものの「錠剤ではなく、小さなビニール袋に入った粉末」と説明、「私が田中香織さんにMDMAを渡したことはなく、無罪です」と譲渡を否認した。弁護側は2人が使用したMDMAは錠剤で、田中さんが用意したものだと指摘した。
 裁判の最大の焦点となる、田中さんの容体が急変した後、速やかに救急車を呼んでいれば助かったかどうかについても「MDMAを渡していないので、保護責任はありません。救急車を呼ばなかったのは認めますが、人工呼吸や心臓マッサージを繰り返し(中略)放置しておらず、無罪です」と主張した。その声は、人定質問の消え入りそうな声とは対照的。眼光も鋭くなり、「否認」を受けて法廷を出て行く報道陣をにらみつけるような表情までみせた。
 拘置中は、裁判員裁判やえん罪に関する本を読みあさり、13回に及んだ公判前整理手続きにもすべて出席、“戦闘準備”を整えてきた。それだけに、証拠や供述が映し出されるパソコンのモニターを食い入るように見つめ、検察側の発言も熱心にメモ。証拠調べでは時折、上目遣いで検察に敵意のこもった視線を向けることもあった。ただ、田中さんの遺体の実況見分の写真が出たときだけは一瞬ひるみ、モニターから目をそらした。次回公判は6日に開かれる。

 ▼事件概要 昨年8月2日夕、東京・六本木ヒルズのマンションの一室で、押尾被告と一緒にMDMAをのんだ田中さんの容体が急変して死亡した。押尾被告は、09年7月に泉田受刑者からMDMAを譲り受けた麻薬取締法違反、事件当日に田中さんにMDMAを譲り渡した同法違反、同日に別の合成麻薬TFMPPを所持した同法違反と容体が急変した田中さんを放置して死亡させたとされる保護責任者遺棄致死の4の罪に問われている。

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2010年9月4日のニュース