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[ 2010年4月23日 06:00 ]

これまでのインバル指揮都響のマーラー演奏風景 (C)堀田力丸

 美しい女性アルマと出会って結婚するという幸福な時期に書かれた第3番はマーラーには珍しく明るく朗らかな活力にあふれた名曲です。恋愛初期の幸せな気分が良く出ている半面、この夫婦の決して幸福とはいえないその後の人生を知って聴いているだけに、私には儚く切ない音楽にも感じられました。少し乾いたような金管と艶やかな弦楽が入り乱れる箇所もあり、まさにマーラーが生きた時代、文化が爛熟する世紀末ウィーンの香りが漂ってくるようでした。

 ところで、インバルの精巧な音楽作りはどことなくNHK交響楽団の指揮台に立つシャルル・デュトワに受けた印象と似ていました。デュトワ同様オケをコントロールする能力に長けており、マーラーの意図を忠実に再現する代弁者のようにも映りました。恐らくこれがマーラーの素顔なのであろうと、なぜかマーラーの鑑賞経験がまだ少ない私にも理解できるほどの説得力満点の演奏だったのです。うれしいことに、インバル指揮による都響のマーラーを上半期のうちに再び聴くことができます。今度は交響曲第2番ハ短調「復活」。6月17日(ミューザ川崎シンフォニーホール)、18日(サントリーホール)の2公演。世界水準の「復活」、これも聴き逃せません!

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2010年4月23日のニュース