涙の後に見えた鮮明な夢 山梨学院日本一のマネジャーは理学療法士の未来へ駆ける

[ 2024年2月9日 23:06 ]

昨夏の山梨大会準々決勝の駿台甲府戦に破れた直後の中沢マネジャー
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 昨春の選抜で山梨学院は県勢初の甲子園大会優勝を果たした。記録員としてベンチ入りした中沢日瑚(にこ)マネジャーは歓喜の瞬間を一塁側ベンチで迎えた。それから1年、優勝に貢献した3年生の多くが東京六大学野球の名門をはじめ、大学野球に進んだ。中沢マネジャーは山梨県の富士河口湖町にある健康科学大に進学する。大きな、大きな夢を胸に抱いている。

 雪が溶けずグラウンドに残った9日、中沢さんは山梨学院のグラウンドを訪れた。1年前と同じ選抜出場を控えた後輩たち。「選抜前なのでちょっとピリピリしているところはあるんですけど、みんな楽しくできていると思います。自分たちの代が優勝したなんて、まだ実感が湧いてなくて“本当に優勝したのかな”と思うくらい」。甲子園で何度も見せた、変わらない笑顔で言った。

 中沢日瑚。「にこ」。その名の通りの笑顔が6度も咲いた。昨春の選抜では1回戦から6連勝で全国の頂点に。中沢さんは開幕試合となった初戦の東北(宮城)戦から決勝の報徳学園(兵庫)戦までベンチで勝利のスコアを刻んだ。甲子園連覇を目指した最後の夏は山梨大会準決勝の駿台甲府戦で延長10回タイブレークの末、7―9で敗れた。試合終了後のあいさつから大粒の涙が止まらなかった。「このナインで最後まで一緒にできて幸せでした。悔しいっていうのもあるんですけど“みんな頑張ったな”って思いました」。試合後には涙がこぼれるままに笑顔をつくり、高校野球に別れを告げた。

 甲子園という夢を終えた野球部員。ある者は白球を追い続け、ある者は野球に終止符を打つ。進路を考えた中沢さんには、ある情景が鮮明に浮かんだ。昨春の選抜、山梨学院には「影のヒーロー」がいた。毎試合、大会主催者により派遣された理学療法士。ベンチ裏からナインをフォローし、万全の状態でグラウンドに送り出していた。6試合連続で先発したエース林は、準決勝、決勝の2戦連続など計4完投、51回2/3で696球を投げ抜き、選抜史上最多の6勝をマーク。理学療法士のサポートがあってこその熱投だった。足がつった内野手も次のイニングの守備にはグラウンドに駆けた。「甲子園での姿を見て体も心も支えられる理学療法士になりたいと思いました」と中沢さん。進学する健康科学大では理学療法学科に進む。

 「やっぱり将来的に野球に携われたらなと思います。山梨学院に(理学療法士として)戻ってくるのが一番の夢」とにっこり。いつの時代も甲子園は人々に夢を授ける。今年の春も、きっとそうだ。(柳内 遼平)

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