【虎番が見た2022年】藤浪が三振に見いだす現実とロマン「野手のホームランと一緒で野球の醍醐味」

[ 2022年12月31日 08:00 ]

通算1000奪三振を達成し、記念のボードを掲げる藤浪

 良いことも、悪いことも、いろいろあった――。2022年の阪神を担当記者が振り返る「虎番2022プレーバック」。スポニチが誇る6人の虎番が個々にテーマを設定し、通常の紙面記事とは異なるネタ、目線、切り口で紹介する。

 “お蔵入り”となった企画がある。9月9日のDeNA戦で藤浪がプロ通算1000奪三振を記録。歴代8位のスピード到達とあって、印象に残る「K」を本人に聞いていた。しかし、その日は今季ワーストの7失点と精彩を欠いたため掲載はならず。この場を借りて記しておく。

 「やっぱり覚えているのは」と迷わず挙げたのはプロ初奪三振。高卒1年目で開幕3戦目に起用された3月31日ヤクルト戦は初回から窮地に立った。1点を失い、なお1死一、三塁で岩村を134キロのカットボールで見逃し三振。「高めから入ってくるカットボールで。ちょっと岩村さんがのけぞるような感じでしたね」

 会心の一つは3年目の5月20日の巨人戦。1―0の9回、先頭の代打で出てきたのは高橋由伸。巨人ファンだった藤浪にとって憧れの存在でも、興奮を必死に抑えて勝負に挑んだ。「当時、代走のスペシャリストの鈴木尚広さんがいて。出塁されたら絶対に出てくる」。フルカウントから外角高め151キロ直球で空を切らせた。「1―0でプロ初完封した試合。高橋由伸さんから三振を奪えたのは純粋にうれしかったです」

 藤浪にとって「奪三振」の意味は変わってきたという。「昔は三振取ってこそピッチャーみたいな考えもありましたけど、今は1球で打ち取れたらOK」。分業制が浸透し、1つのアウトに最低3球を要する三振は先発完投の理想を妨げるものなのかも…。ただこの言葉には続きもある。「より確実にアウトを取れる、リスクが少ないのも奪三振。何より、野手のホームランと一緒で野球の醍醐味(だいごみ)。ピッチャーやる上で魅力的なものなので」。藤浪が海の向こうに行っても求め続ける“ロマン”だろう。(阪神担当・遠藤 礼)

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