カブス・誠也 WBCへ思い 侍4番は村神様に「僕が支えられるんじゃないですか?」

[ 2022年12月29日 05:00 ]

打撃練習する鈴木誠也(撮影・会津 智海)
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 カブスの鈴木誠也外野手(28)がスポニチ本紙の単独インタビューに応じ、2大会連続での出場を表明した来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた決意を語った。19年プレミア12と昨夏の東京五輪で侍ジャパンで不動の4番を務めた男が、米2年目のシーズンを前に出場を決断した背景や、4番への思いなど、率直な思いを口にした。(聞き手・柳原 直之)

 ――今月8日に来年3月開催のWBC出場意思を表明した。
 「悩むというより、出たい気持ちはずっとあった。ただ、立場的に僕はまだ(カブスに)入りたて。レギュラーでバリバリというわけでもないので、球団に意見を聞いた上で決めないといけない。しっかり考えながら話し合って、結論を出した」

 ――決め手は。
 「(監督の)栗山さんが米国に来てくださって、食事に行って、いろいろ話をさせてもらった。そこで“行きたいな。何とか力になりたい”となった。次のWBCでまだ野球をバリバリできているのかも分からない。こんな成績でも必要としてくれるというのはうれしい。挑戦してみようと思った」

 ――17年大会と今大会に臨む心境の違い。
 「前回は日本(広島)にいて、メジャーの選手が来ると“凄いな”と。テレビでしか見たことがない選手なので、名前負けではないけど“うわあ”となっていた。あっち(米国)でやっていると、一緒に試合をして、同じ人間だなと思う。調子が悪い時もある。もちろんレベルは凄く高いけど、勝つ余地はある。日本でやっている選手よりは少し余裕を持って試合には臨めると思う」

 ――19年のプレミア12、21年の東京五輪では全試合で4番を任された。こだわりは。
 「全然、ないです(笑い)。そこはムネ(村上)がいいと思います。56本塁打も打っている」

 ――自身が考える4番像は。
 「そのチームや、チーム状況によっても打順の役目は変わる。侍ジャパンの4番だから本塁打を打たなきゃいけないというのはない。周りが凄いので、つなげられることがベスト。もちろん走者がたまっている時に、一本欲しい時に打つのも4番だと思う」

 ――侍ジャパンの4番の重圧は違う。
 「もちろん重圧というか4番という責任感はある。ただ、日本代表は素晴らしい選手が集まるチーム。もちろん結果を出すためにやってましたが、良い意味で僕が打てなくても周りが打ってくれる、というメンタル的に少し楽な部分もあった」

 ――4番・村上をサポートするイメージ?
 「“村神様”に僕が支えられるんじゃないですか?(笑い)。その時の打順によって何とか(役目を)全うできるように頑張りたい」

 ――第1回、第2回大会ではイチローが精神的支柱になり、その役割も期待される。
 「それはもう翔平とダルさん。僕はないと思う。そっと陰に隠れて。あんまり声を出すタイプでもないので。“村神様”の背中を追い続けていきます。僕は脇役で(笑い)」

 ――NPB所属の選手に伝えられること。
 「もちろん(メジャーの)投手は球が速くて、日本の投手と違うところもあるけど、僕で打てるので。打てるよ、大丈夫だよって」

 ――ダルビッシュ、大谷とは違う立ち位置という意味か。
 「今の(代表)選手はほとんど日本で一緒にやっていた選手たち。翔平とかダルさんのことを(生でプレーを)見ていない選手もいる。だから異次元の選手と思っている。僕とは日本で同じ時期にやっていた選手がたくさんいる。そういった意味では、僕がこっち(米国)でやれているんだったら、何となくできるんじゃないのかと思ってくれたらいい」

 ――ダルビッシュ、大谷への“橋渡し役”ができる。
 「そうですね。たぶん(若い選手は2人と)話しづらいじゃないですか。ただ、みんな、僕の性格は知っているし、試合中、僕がいじっていた選手も他球団にいたので。そういった意味では、何となく話しかけやすいんじゃないかなと思う」

 ――どの選手も優勝への思いが強い。
 「もちろん優勝は目標。目指すのは当然だと思うけど、やっぱり(サッカーの)W杯を見ていても、(日本代表は)優勝はしていないけど、何か影響を与えるような盛り上がりが凄くあった。そういうふうになりたい。もちろん勝って優勝して盛り上がるのが一番だけど、ただ出るだけではなくて、優勝だけでない何か、野球の魅力を少しでも伝えたい」

 ――サッカーW杯で感じるものがあった。
 「感動して、凄く気持ち的にも高ぶった。これは(子供たちが)サッカーをやりたくなるな、という思いになるような盛り上がりだった。僕たちも、野球やりたいなと思わせられるような、そういう大会にしたい」

 ≪19年のプレミア12でMVP≫鈴木は19年のプレミア12と昨夏の東京五輪に、いずれも「4番・右翼」として全試合に先発出場。プレミア12は8試合で打率.444、3本塁打、13打点の大活躍で、MVPとベストナインに選ばれた。前回のWBCは7番で3試合、6番で1試合に先発出場。米国に敗れた準決勝は出場機会がなかった。

 ≪「体づくり」でパワーアップ≫現在、鈴木は関東圏で自主トレを続けている。打撃練習ではポケットサイズのスピードガンで打球速度などを計測しながら、鋭い打球を連発。このオフのテーマに「体づくり」を掲げ「フィジカル的な部分で、筋量的にもっと上げないといけない」と、さらなるパワーアップをもくろんでいる。

 ≪新井新監督から古巣復帰誘い!?≫鈴木が、古巣・広島の新井新監督とのメールでのやりとりを明かした。15~18年にチームメートだった先輩の監督就任時に「おめでとうございます。頑張ってください」と送信したところ「全部、捨てて戻ってこい。でも、広島の顔である野間選手より年俸はあげられない」とジョーク交じりに返信があったという。いじられた野間と仲良しの鈴木は「すみません。それは行けません、と(返した)」と、笑って振り返っていた。

 【取材後記】取材後、色紙にWBCへの抱負を書いてもらうと、鈴木はサインの横に「がんばるしん!」と一筆。TBS系「水曜日のダウンタウン」での企画でカップル成立が話題になった、お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃんの得意フレーズで意気込みを記した。面と向かって話すのは、16年11月に取材した大谷(当時日本ハム)との対談企画以来6年ぶり。シャイなのにひょうきんな性格で、野球の話になると熱っぽい。当時の印象と全く変わらず、インタビューの予定時間は、あっという間に過ぎた。「悩むというより、出たいなという気持ちはずっとあった」というWBC。栗山監督が求める、日本代表への“魂”を感じる選手だ。(WBC担当・柳原 直之)

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