企業が評価する大学野球のマネジャーたち 首都リーグ学生副委員長・川上朱理さんが得た「まとめる力」

[ 2022年11月25日 08:00 ]

学生副委員長としての最終日を迎え、北内真太委員長(左)と握手する川上朱理さん(右)(撮影・柳内 遼平)
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 記者になるまで大学野球と無縁だった私。高校卒業後は四国・九州アイランドリーグの審判員になり、紆余(うよ)曲折を経て20年にスポニチに入社。高卒記者は、そこで大学野球に出合った。

 入社以来、アマチュア野球担当として東都大学リーグや東京六大学リーグなどを取材。選手のレベルの高さとともにリーグの運営方法に驚いた。高校野球は基本的に高野連、教諭らで県大会など公式戦の運営を行うが大学野球は学生が中心。試合の記録からSNSの更新、取材対応、会計など多岐にわたる業務をリーグに加盟している大学野球部のマネジャーが担い、学業と「仕事」を両立する。在学中に経験できる貴重な実務を企業も高く評価。毎年多くのマネジャーが誰もが知る企業に入社している。

 東海大野球部のマネジャーで今秋まで首都大学連盟の学生副委員長を務めた川上朱理さん(4年)もその1人。学生委員長の日体大・北内真太主務(4年)とともにリーグ運営を指揮。11月14日に行われた首都大学リーグの1部、2部入れ替え戦を最後に引退し「無事に終わってよかった。いろいろなことがあったんですけど楽しかった。4年間で人をまとめる力がついたと思います」と語った。

 東海大札幌(北海道)時代に野球部マネジャーとなった川上さん。それまで野球に接する機会がなく「なんで選手は頭を丸刈りに?」と疑問に思うほどだった。当然、ルールも知らずスコア付けにも苦戦したが、持ち前の明るさと高いコミュニケーション能力でメキメキと実力を伸ばした。3年時には当時、東海大の監督だった安藤強氏(来季から巨人2軍総合コーチ)から「東海大でやってみないか」とマネジャーとして異例のオファーを受けて首都大学リーグの名門に進学を決めた。

 東海大ではマネジャーとして野球部のサポートに励みながら、例年6月ごろに神奈川・平塚で行われる大学代表の選考合宿にも参加。今年の合宿に参加した日体大・矢沢宏太投手(日本ハムドラフト1位)ら首都リーグの選手だけではなく、全国からトップクラスの選手が集まる場で50メートル走やスイングスピードの計測、試合のスコア付けなど選手をサポート。一番近くで選手と交流し「トップクラスの選手はあいさつや人との対応の仕方も全然違う」と刺激を受けた。その中でも特に印象的だった選手として今年の代表チームで主将を務めた立大・山田健太内野手(4年)を挙げ「あの人が言うと選手はついてくる。一言でまとめる力がすごい。相当な力のキャプテンシーを感じました」と目を輝かせた。

 円滑なリーグ運営には他大学のマネジャーとの連携が不可欠。多くの人との関係構築には「後輩、先輩、同期も関係なく同じ目線で話すことだと思います」と言う。既にIT業界の一流企業に就職することも決まっており「マネジャーをやってよかったなと思うシーンがたくさんあると思います。お金を稼げるように頑張ります」と笑う。

 野球部に属しながらバットもグラブも使わない4年間で得た貴重な経験。就職先ではドラフト上位指名選手のような「即戦力」となるのだろう。(記者コラム・柳内 遼平)

 ◇川上 朱理(かわかみ・あかり)2000年(平12)12月4日生まれ、大阪市出身の21歳。花乃井中を経て東海大札幌(北海道)に進学。東海大では4年春から学生副委員長を務める。憧れの人は東海大の3学年上でマネジャーを務めた坂爪逸輝さん。趣味はゴルフ。

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