育成年代こそ見るべき 「超」緻密な新庄野球をアマチュア選手に勧める理由

[ 2022年3月20日 08:34 ]

19日のオープン戦。アルカンタラの適時二塁打で生還した石井を出迎える新庄監督(左端)ら日本ハムナイン(撮影・西川祐介)
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 プロ野球は見なくていい――。私が中学生の頃、当時所属していたチームの指導者からそう言われたのを記憶している。その言葉に続くのが「高校、大学、社会人野球を見なさい」。もちろんプロ野球から見て学ぶものも多いが、プロはすでに完成されている。基本に忠実なアマ野球を参考にしなさいという意図だったが、今は育成年代こそ日本ハムの野球を見た方がいいと言いたい。

 「超」がつくほど基本に忠実で、緻密な新庄野球に学ぶものは多い。例えば内野ゴロの二塁併殺プレー。守備者は最高ゲッツー、最低アウト1つであるが、最低以下の失策だけは犯したくないため、心理的には守りに入りやすい。普通に処理して最低のアウト1つでも誰から攻められる訳でもないため、送球は安定を重視したくなる。いわゆる「見えないエラー」だが、新庄監督はそこに着目していた。

 キャンプ期間中、守備練習も兼ねた打撃練習中に新庄監督が内野に歩み寄って声を掛けた。「思いっきり全力で投げて。暴投でもいいから」。それまで制球重視だった二塁送球は一変。捕球役を務めていた球団マネジャーのグラブが破れるのではないか、というほどの豪快な送球が繰り返された。「守りは守りなんだけど、攻めなんだよね」。野手心理を知り尽くしている指揮官だからこそ、0・1秒を縮める練習に取り組んでいた。

 打撃ではファーストストライクを打ちに行く積極性や、追い込まれてから投手返しで軽打するペッパー打法を推奨。走塁では二塁ベースを右足で蹴って最短距離で回る方法や、状況に応じたディレードスチールなど細かい指導は多岐にわたった。それは、FAや大物外国人など大型補強に頼るチームではないため。言葉は悪いが“弱者の戦法”で、勝ち上がるしかないからでもある。

 強者に対して限られた戦力、環境でどう工夫して立ち向かうか。それは、育成年代にも当てはまる。是非とも、試合だけではなく練習から見て欲しい。さまざまな勝つための工夫が、新庄野球には詰まっている。(記者コラム・清藤 駿太)

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2022年3月20日のニュース