殿堂入りへ高かった米国の「75%の壁」 ボンズ氏は時代の“被害者”

[ 2022年1月27日 05:30 ]

米国野球殿堂

バリー・ボンズ氏(AP)
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 【記者の目】記者は今回で9度目の投票。全てでボンズ氏に票を投じた。理由はマーク・マグワイア氏、サミー・ソーサ氏がともに当時のメジャー記録を超える本塁打王争いをした98年にさかのぼる。ボンズは史上初の「400本塁打&400盗塁」を達成したがメディアの扱いの小ささにひどくショックを受けたという。

 そこから筋肉増強剤の影響か、一気に10キロ近く増量し、パワーヒッターに転身。01年に73本塁打のシーズン最多本塁打記録を打ち立てた。ボンズ氏は04年にMLBが薬物検査を厳しく取り締まるようになってからは一度も陽性反応が出たことはない。98年時点で既に殿堂入りに値する実績を残していた。ボンズ氏は薬物規制が不十分だった時代の“被害者”だと思っている。

 殿堂入りに必要な75%という得票率についても考察したい。日本では議会などで可決とされる過半数以上の66.0%の票を集めている。ただ“人種のるつぼ”である米国では十分ではない。とりわけ近年、社会の分断が深刻化。コロナ感染者、死者数はともに世界ワーストだがワクチン接種完了者(規定の回数を接種)は24日時点で63.7%と停滞。一定数の人々が薬物に対して嫌悪感を抱くのは仕方のない事情もある。

 殿堂入りは記者投票の他に選考委員会による選出もある。ボンズ氏の“逆転弾”に期待したい。(奥田秀樹通信員)

 ▽米国野球殿堂の選出方法 選考対象はメジャーで10年以上プレーし、最後にプレーしてから5年以上経過した選手。同選手は全米野球記者協会の適性審査委員会で候補となるか決まる。同協会在籍10年以上の記者が成績、品格、チームへの貢献度などを考慮して投票し、75%以上得票すれば殿堂入り。選考期間は10年間で、得票率が5%に満たなければ翌年の対象から外れる。

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