21世紀枠候補・高松一 「怪童」中西太氏の母校が部員13人で73年ぶりの“春”を待つ

[ 2021年12月11日 05:30 ]

来春選抜大会の21世紀枠候補四国地区推薦校に選出された高松一ナイン
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 日本高野連は10日、来春の第94回選抜高校野球大会(3月18日から13日間、甲子園)の21世紀枠候補9校を発表した。四国地区からは部員わずか13人で昨秋の香川大会8強に進出した高松一(香川)が選出。県内有数の進学校であるとともに、OBに「怪童」中西太氏が名を連ねる伝統校が、73年ぶりの「春」を待つ。出場校は一般枠とともに来年1月28日の選考委員会で決定する。

 高松市の中心部にある校舎から南へ約10キロの市営南部運動公園。高松一の部員たちは日の暮れかけたグラウンドで、選抜出場へ一歩前進となる吉報を知らされた。山下悠馬主将(2年)は「15時からソワソワしていたが、今は素直にうれしい」と笑みを浮かべた。

 1928年創立で野球部は30年創部。OBに西鉄で強打の内野手として53年にトリプルスリーを達成した「怪童」中西太氏がいる。毎年、国公立大学にのべ200人近い合格者を出している県内屈指の進学校。その伝統ある野球部だが、存続の危機に直面している。

 選手は2年生9人、1年生4人の13人。来秋以降は単独チームでの出場すら危ぶまれる。新チームでは実戦経験を積むためOBの3年生3人や大学生の応援参加を受けて紅白戦を実施。山下主将は「下の代以降も勝てる一高であるためにも、結果を」と奮起。秋季大会は実力校を倒し8強入り。自校グラウンドは使えず7時間授業で練習時間も少ない。搆口(かまえぐち)顕太郎監督は「今ある環境でやれることをやろうと言ってきた成果」と困難を克服しての結果にうなずく。

 甲子園には春夏計4度の出場があり、選抜は中西氏を擁した49年が唯一。最後は72年夏と遠ざかる。半世紀ぶりの聖地、73年ぶりの「春」は訪れるのか。多くのOBたちも同じ気持ちで待っている。(石丸 泰士)

 ▼中西太氏(野球評論家) わたしにとって野球人としての礎になったのが高校時代でした。母校が21世紀枠の候補校に挙がったことで、また故郷を思い出しました。もし正式に出場が決まれば、高松のみなさんも喜ぶでしょうし、わたしも甲子園に応援に行くことも考えたいと思います。

 ▼尾木直樹氏(教育評論家、高松一OB)私の同級生も当時野球部の投手。応援で高松球場に行ったりもしましたし、(同じくOBの)中西太さんが伝説でしたね。部員13人は驚きですが、今はそういう学校も増えている。一高は市民に愛されるシンボル。選抜に出場できるよう応援していますし、出場がかなえば思う存分、のびのびとプレーしてほしい。

 ▽21世紀枠 甲子園への出場機会を広げるために01年の第73回大会から導入。練習環境などのハンデ克服や地域貢献など戦力以外の要素も加味。秋季都道府県大会16強(加盟129校以上の場合は32強)以上を条件に全国9地区から1校ずつ候補として推薦。東(北信越、東海以東)、西(近畿以西)から1校ずつ、残り7校から3校目を選ぶ。

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2021年12月11日のニュース