只見、福島の銀世界から甲子園の銀傘へ!日本有数豪雪地帯の“秘境校”がセンバツへ前進

[ 2021年12月11日 05:30 ]

21世紀枠候補に選ばれた只見
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 日本高野連は10日、第94回選抜高校野球大会(来年3月18日から13日間、甲子園)の21世紀枠候補9校を発表した。東北地区は今秋福島県大会で創部初の8強入りを果たした只見(ただみ)が選ばれた。南会津郡にある同校は、冬には3メートル近い積雪があり、室内練習場がない環境でハンデと向き合っている。出場3校は一般選考の29校とともに、来年1月28日の選考委員会で決定する。

 山奥で練習に励むナインに、うれしい知らせが届いた。授業終了後の午後3時5分。只見の伊藤勝宏校長が校内放送で「東北地区代表校に選出されました」と伝えると、吹き抜けの校舎内に割れんばかりの拍手と大歓声が響いた。遊撃手の吉津塁主将(2年)は「本当にうれしい。正直、信じられないです」と興奮を隠し切れなかった。

 只見町は福島県の最西端に位置。コンビニまでは約1時間、所属する会津支部の支部予選に出場するにも、2時間の道のりを経て球場へ向かう「秘境」だ。国からは、積雪により生活に著しい支障が生じる地域として「特別豪雪地帯」に指定されている。

 冬場は3メートル近い積雪があり、毎年11月中旬から4月下旬まで、グラウンドは一面の雪景色。室内練習場がなく、駐輪場や屋内の通路を使って練習する。ハンデを乗り越え、今秋の福島県大会では、春夏秋を通じて創部初の8強入り。逆転、サヨナラなど、驚異的な粘りを発揮して勝利を積み重ねた。同町出身の長谷川清之監督は「甲子園を目指してずっと取り組んできて、こういう土地からでも、やっとあと一歩のところまでたどり着けた」と感慨深げに話した。

 只見町には「山村教育留学制度」が設けられ、全国各地から生徒を募集。町営の寮に住みながら地元の生徒と交流を深める。野球部にも5人の留学生がおり、会津若松市出身の二塁手・室井莉空(2年)は「只見は少人数で野球に集中できる環境がある。地元の倍以上雪が降って最初は戸惑ったけれど、今は慣れてきました」と笑う。

 町内唯一の高校には周囲もサポートに熱心で、野球部は町が管理するグラウンドで練習。応援の声を掛けられることもしばしばだ。発表があったこの日は「普段は熊が出たりした時に使う」(長谷川監督)という町内放送で、東北地区代表決定の知らせが流れた。吉津主将は「自分たちの活躍が地域の活性化にもつながる。恩返しをしたい」と誓った。

 選手は14人で、マネジャーを含めた部員は16人。1月には雪の壁に囲まれている校舎で、それが解けるよりも早い「春」の到来を信じている。(秋元 萌佳)

 ≪人口約4000人≫福島県の西南に位置する只見町は、西南部は新潟県に接している。伊南川、只見川など森林資源に恵まれている。ユネスコパークに東北で唯一認定されている、自然豊かな日本有数の豪雪地帯で、昨年は3メートルの積雪も記録した。奥会津地域一帯は過疎化、少子高齢化が加速しており、只見町の人口は約4000人。町内唯一の高校である只見高校では、次年度からは全学年1クラスになる予定だ。一方、只見町では02年から「山村教育留学制度」を導入し、全国から生徒を受け入れてきた。これまでの総留学生は190人となった。卒業後に町で就職する生徒もいるという。野球部員にも同制度を利用して入学した生徒が5人いる。

 ≪県勢過去3校選出≫福島県勢の21世紀枠でのセンバツ出場は過去に3校。01年は安積が初戦で金沢に1―5で敗れ、13年にはいわき海星が遠軽に0―3で敗退した。20年の磐城は大会が中止になり、夏に甲子園で行われた交流試合で国士舘と対戦し、3―4で敗れた。

 ▽21世紀枠 甲子園への出場機会を広げるために01年の第73回大会から導入。練習環境などのハンデ克服や地域貢献など戦力以外の要素も加味する。秋季都道府県大会16強(加盟129校以上の場合は32強)以上を条件に全国9地区から1校ずつ候補として推薦。東(北信越、東海以東)、西(近畿以西)から1校ずつ、残り7校から3校目を選ぶ。

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