【オリックス・由伸独占手記】五輪で田中将から学んだ多くのこと 気になるメジャー挑戦については

[ 2021年10月28日 07:00 ]

オリックス 25年ぶりパ・リーグ制覇

優勝し笑顔で会見する山本 (撮影・奥 調)
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 オリックスが1996年以来、25年ぶり13度目のパ・リーグ優勝を達成した。優勝マジックは一度も点灯せず、27日にロッテが敗れて決定。04年11月の近鉄との合併後は初めてで、現12球団で最も長く遠ざかっていた頂点に立った。18勝など投手5冠とMVPを確実視される山本由伸投手(23)は東京五輪の金メダルに続く栄冠をつかみ、独占手記を本紙に寄せた。25年前はイチローがいたように、いまはヨシノブがいる。

 1年間戦い抜いて、全員で勝ち取った優勝なので喜びが大きい。チームが優勝できた、一番で終われた、ということが本当にうれしい。最終戦も勝ち切ることができたし、やることは、やりきった。ベストは尽くせた。

 東京五輪で優勝した時から「オリックスで優勝できたら、どれだけ、うれしいだろう」とずっと思っていた。

 五輪後、岡山に日帰りで帰省した。家族も喜んでくれた。ここまで来られたのは自分の力ではない。育ててくれた母、家族に対して年々、感謝の気持ちが増すばかりだ。親への感謝が大きくなり、自分も少しずつ大人になれていると実感する。

 個人的に振り返って感じるのは悔しさだった。初めて開幕投手を務めて、勝てなかった。来年は絶対に勝ちたい。シーズン序盤は、いい投球ができる試合もあれば、悪いところが出る試合もあった。昨年と同じミスで、また繰り返したことが悔しかった。

 いい投球をした試合のイメージを引きずって、次の試合も、同じものを求めて崩れる。1週間の調整でどうしてもズレていく。だから、どんな投球をしても一から調整し直さないといけないと分かっていたのに。6月から調子を上げ、調整をつかみ、いい状態で投げられたのは成長した部分だと思う。

 開幕前に初めて伊勢神宮を参拝した。「健康。ケガなく1年投げきる」と願った。それ以上の結果が出たことが素直にうれしい。管理栄養士に本格的に依頼して、食生活から見つめ直した。これがなければ体を維持できなかった。この1年、好物のマクドナルドは控えた。あの紙袋のにおいが好き。テリヤキバーガーのセット。サイドサラダ、プチパンケーキとナゲットも付けて。全日程が終わったら一度ぐらいはいいかな。

 チームは個々の能力が上がった。(福田)周平さん、宗さんの1、2番が固定され、ラオウ(杉本)さんが本塁打王確実。でも一番は中嶋監督の力だと思う。山岡さんや(吉田)正尚さんのケガ…。これだけのハプニングがありながら、いろんな引き出しを使い乗り切ったのは凄い。中継ぎ陣で50試合も投げる人は1人だけで、3日連続の3連投はいない。だから中継ぎが安定した。先を見ている監督だと感じる。

 実は監督とは6月まで、ほとんど話す機会がなかった。表情から感情も読めないし、嫌われているのかなと不気味だった…。きっかけは7回2失点で勝利投手になった7月2日のメットライフでの西武戦。京セラドームはマウンドが高く、同じようにメットライフの低いマウンドで投げると、角度が浅くボールが高くなる、と教わり、「ワンテンポ、ためをつくり、いつもより低めを意識して」と助言してくれた。

 それからは京セラドームの風呂場でも話すようになった。実は悪くなる傾向として、ある配球パターンがある。「そうなるなよ!」と指摘されたこともあった。「監督を胴上げします」なんて偉そうなことは言っていない。冗談好きで、試合前によく言われたのが「来てたのか」だ。試合前の監督はメンバーを考えたり少し遅れてグラウンドに出てくるので、練習時に姿を見られなかったからの冗談。登板の日は「ずっと座っているからな」と任され、張り詰めたものを和らげてくれた。

 世界一になった侍ジャパンは、いい出会い、いい経験だった。どの先輩もそう。特に田中将大さんと一緒にできた。試合に向かう姿勢も熱く、練習から完璧だった。

 短い距離での軽めに始めるキャッチボール。隣だから声が聞こえる。1球ごとに「今のはダメだ」と悔しがっていた。この段階から、そこまで丁寧にやるのか…と。強く投げるだけが全てではないと学んだ。

 ブルペンでも制球力が、何というか、美しい。こうするべきなんだと。普段の取り組みから意識が変わり、少しずつ前の自分より良くなっている。授与式で田中さんに金メダルを首にかけてもらったことも思い出だ。背番号順に整列していただけで、田中さんから、かけてもらえるなんて本当に運がいい。

 メジャー挑戦のことをよく聞かれる。もっとチームに恩返しをしたいし、毎年優勝したい。一番ではないし、凄い人はたくさんいる。まだ5年目。1軍では4年しかやっていない。能見篤史さんや引退を決めた松坂大輔さんらを見れば、もっと頑張らないといけない。

 CSから日本シリーズへ。最後も1位で終わりたい。一試合一試合、全力で戦っていく。(オリックス・バファローズ投手)

 ◇山本 由伸(やまもと・よしのぶ)1998年(平10)8月17日生まれ、岡山県出身の23歳。伊部小1年で野球を始め、宮崎・都城では甲子園出場なし。16年ドラフト4位でオリックス入団。18年にセットアッパーとして1軍定着。19年は先発に転向し防御率1.95で初タイトル。20年は149三振で最多奪三振に輝いた。1メートル78、80キロ。右投げ右打ち。

 ○…山本(オ)は防御率(1.39)、勝利数(18)、勝率(.783)のタイトル3部門と、最多完封(4)のリーグ1位が確定。奪三振(206)を含む投手5冠なら、06年斉藤和巳(ソ)以来8人目で球団では初。チームへの貢献度からみてもリーグMVPの最有力候補に挙がる。

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