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【内田雅也の追球】傷口広げた阪神「前進守備」の考察 難しい「1点」のさじ加減

[ 2021年9月20日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1ー8巨人 ( 2021年9月19日    甲子園 )

<神・巨(19)>2回、吉川(手前)の3ランに厳しい表情の矢野監督(右)
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 阪神が1点を惜しんで7点を失った前進守備を考えてみたい。1点を巡る考え方である。

 1点先取直後の2回表1死二、三塁、打者は8番・大城卓三。阪神内野陣は前進守備バックホーム体勢をとった。1点を防ぎにいったわけだ。

 大城の打球はゴロで二塁手やや左に転がった。糸原健斗のバックハンドの先を中前に抜け、2者生還の逆転打となった。

 二遊間が深く守り「1点OK」の守備体形なら二ゴロで2死三塁。次は投手・菅野智之で1失点(同点)ですんだろう。

 現実は2点を奪われ、直後に失策、2ラン、3ラン被弾であっという間の大量7失点となった。

 もちろん7点まで失った要因には、糸原が打球を止めていれば……二封プレーでの中野拓夢の捕球ミスしていなければ……ジョー・ガンケルが2発も被弾しなかれば……と他の要素が多分にある。だから、ここでは「同点OK」か否かの「1点」について考えたい。

 なぜ、阪神は前進守備を敷いたのだろう。相手は優勝を争う巨人、今季最後の甲子園での伝統の一戦。大事な試合だ。

 その相手巨人が1回裏1死三塁、打者3番(糸原)で前進守備を敷いてきていた。攻守が入れ替わりながら試合が進む野球は相手に刺激を受ける競技でもある。序盤から1点を防ぎにきた相手(監督・原辰徳)の姿勢に呼応したのか。

 ただ、試合前で巨人に3・5ゲーム差をつけ、首位にいる阪神は立場が違う。悠然と構える姿勢もまた大切である。

 監督・矢野燿大は残り30試合となり、より1点の重要性を示したかったのかもしれない。それは1回裏無死二塁で2番・中野に命じた送りバントにみてとれた。つい2試合前(15日・ヤクルト戦)、同じ初回無死二塁では強打を命じていた。

 大毎、阪急、近鉄を計8度のリーグ優勝に導いた名将、西本幸雄は「大事な試合で、監督が大事にいこうと堅い作戦を採ると、選手が硬くなる」と話していた。西本はあの「江夏の21球」の1979(昭和54)年日本シリーズ最終第7戦、1点を追う土壇場、9回裏無死一塁で、ヒットエンドラン(結果は空振りで盗塁成功)を命じていた。

 選手は常に監督をみている。その態度や作戦がチームに伝播(でんぱ)する。そういうものだ。

 そして、1点の重みは試合序盤と終盤、そしてシーズン序盤と終盤でも変わる。いずれも終盤になるにつれ重みを増す。人間的な野球である。ちょうどいい塩梅(あんばい)はどうか。1点に対するこだわり方のさじ加減は難しい。

 残り試合が少なくなってきたとはいえ、まだ、このさじ加減は調整がきくとみている。最後の激闘で、いい塩梅となるようにしたい。

 矢野は監督就任時「負けた試合にこだわりたい」と話していた。この夜は惨敗だったが、大切な1敗である。 =敬称略= (編集委員)

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