【内田雅也の追球】確率を超えた攻防 先頭出塁5度で零敗を喫した阪神 統計に「隠れた部分」の勝負

[ 2021年9月16日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神0-1ヤクルト ( 2021年9月15日    神宮 )

<ヤ・神(20)> 3回無死一塁、中野は空振り三振に倒れる(撮影・大森 寛明)
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 統計上、無死一塁で得点が入る確率は約4割ある。これが無死二塁となると約6割にあがる。

 鳥越規央・データスタジアム『勝てる野球の統計学――セイバーメトリクス』(岩波科学ライブラリー)に2004~13年の10年間、NPBでの状況別得点確率がある。無死一塁で40・6%、無死二塁で58・9%だ。数字は今もさほど変わっていないだろう。

 ならば、この夜の阪神は確率的に相当低い零敗と言える。何しろ1、2、3、4、6回と5度も回の先頭打者が出塁しながら、得点できなかったのだ。しかも1、2回は先頭打者が二塁打で無死二塁だった。あえて計算はしないが、このすべての無死の走者を無得点で終える方が難しい。

 ひと言で言えば拙攻である。9残塁・2併殺で塁上11人の走者は1人も生還できなかった。前夜もジェフリー・マルテの劇的3ランで引き分けたとはいえ、11残塁・2併殺だった。好機に一打が出ない、重苦しい攻撃が続いている。

 ただ、適時打以前にこの夜は回の先頭打者が出た直後の打者がおかしかった。1回無死二塁は中野拓夢が右飛。2回無死二塁はジェリー・サンズ遊ゴロ。3回無死一塁は中野空振り三振に近本光司二盗憤死の併殺。4回無死一塁は大山悠輔遊ゴロ併殺打。ベンチからは恐らく進塁打の指示などなく「打て」だったと思うが、打者本来のスイングではなかった。打者が「走者を進めなくては」と自らを縛っているなら考えをあらためたい。

 6回無死一塁の中野は送りバント(成功)でベンチが走者を進めたい時には、明白にサインが出る。指示がない「打て」の時は、もっと奔放に打っていいのだ。

 実は試合中、ヤクルトの「スミ1」で進む0―1の展開に、阪神ペースだと眺めていた。阪神は試合前まで今季、1点差試合でセ・リーグ最多18勝をあげ(10敗)、最高勝率・643を記録していた。しかも9月に入ってからの6勝は競り勝ち(3点差以内5勝)で、3敗はすべて大敗(7点差以上)、そして終盤追いついた価値ある2分けだった。この競り勝ち・大負けパターンを好循環だとみていた。

 その点ではこの0―1敗戦は今後に向けての教訓や糧にしたい。先に確率的に珍しい零敗と書いたが、優勝争いの秋、確率を超える力が物を言う時期にある。この夜は相手エースの小川泰弘、さらに清水昇、前夜救援失敗のスコット・マクガフの気迫と闘った結果、敗れたのだ。

 以前も書いたように、「スタッツ(成績や統計)はビキニを着た女性のようだ」と大リーグ・レンジャーズなどで活躍、監督も務めたトビー・ハラーが語っている。「多くを見せてくれるが、すべてではない」

 ビキニに隠れた部分とは何だろう。根性野球ではないが、気迫や闘志だと言えるのではないか。さあ、激闘はこれからが本番。確率を超えた勝負である。 =敬称略= (編集委員)

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