プロ注目・前川の2戦連発で智弁学園10年ぶり8強 浜風切り裂く驚弾に阪神スカウトもどよめき

[ 2021年8月26日 05:30 ]

第103回全国高校野球選手権 3回戦   智弁学園7-1日本航空 ( 2021年8月25日    甲子園 )

<日本航空・智弁学園>9回1死一塁、2ランを放つ智弁学園・前川(撮影・河野 光希)
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 智弁学園が3回戦で日本航空を7―1で破り2011年以来、10年ぶりの8強入りを果たした。プロ注目の前川(まえがわ)右京外野手(3年)が9回に右中間席へ2試合連続本塁打となる2ランを放ち勝利を決定づけた。守っては自身同様に1年夏から甲子園を経験する小畠一心投手(3年)が3安打1失点で完投勝利。チームは春夏通算40勝目を飾った。

 勝利を決定づけると同時に相手の戦意を喪失させた。前川が、また打った。9回1死一塁、カウント1―1から4番手の左腕・小沢耕介のスライダーを仕留めた。この日、初めて前に飛んだ打球は右翼から左翼に強く吹いていた浜風をものともせず右中間席に飛び込む高校通算37号。視察した阪神・和田豊テクニカルアドバイザーらスカウト陣も、どよめく一撃だった。

 「苦しい試合だったけど、左投手から打てて良かった。風も吹いていたが芯(しん)で捉えライナーを打つことを意識していた」

 初回、四球の後の4回は左腕バデルナのスライダーに空振り三振するなど7回までの4打席は徹底マークにあい2四球2三振。ベンチで隣に座る岡島光星に打席での印象を聞くと「力が入っているからバットが出てこない。楽に行け」と助言され、素直に聞き入れた。試合前に届いた兄・夏輝さん(20)の「甲子園を楽しめ」のメッセージも思い出した。9回、塁上にいた岡島は「それまで顔も硬かったが笑顔になって打てると思った」と言い、次打者席にいた山下陽輔も「オーラが出ていた。雰囲気があった」と変化を感じ取っていた。

 甲子園の浜風と向き合ったスラッガーのバットの軌道が目に焼き付いている。今春の選抜前にテレビ番組の企画で、金本知憲氏(本紙評論家)が同校のグラウンドを訪問。「腰の回転を使えばボールは飛ぶ」という言葉に聞き入り、目の前でバットを振られた。あれから5カ月。鉄人のスイングに少しだけ近づけた手応えがあった。

 2回戦の横浜戦の初アーチから2戦連発。左右の違いこそあれ、比較され続けたOBの岡本和(現巨人)に甲子園での本塁打数で並んだ。「最後にホームランを打って終われた。次も最高の準備をしていきます」。仲間と交わした日本一の誓い。開眼した今なら必ず実現できる。(鈴木 光)

 《対戦回避望むも…26日にVS明徳》26日の準々決勝で智弁学園との対戦が決まった馬淵監督は「縁があるんでしょう」と淡々と語った。第2試合でグラウンドに入ると三塁ベンチ前で、第1試合で勝利した智弁学園の小坂監督に声を掛けられた。試合後の抽選に向け「(智弁学園の対戦相手番号の)44番は引かんでくださいよ」と言われたという。岡本和(現巨人)がいた14年夏に1回戦で対戦し、10―4で勝利している。

 《「和歌山」と初のWベスト8入り》この日に智弁学園、神戸国際大付、近江が勝ち近畿勢は京都国際、智弁和歌山と計5校が8強入り。81年などの4校を上回る大会史上最多となった。智弁学園と智弁和歌山がそろって8強入りするのは初めて。

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