菅野辞退も大胆な投手再構築が奏功 追加招集千賀&大海躍動で決勝零封

[ 2021年8月9日 05:30 ]

金メダル獲得に大きく貢献した千賀
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 【黄金STORY 侍JAPANの舞台裏(上)】悲願の金メダルをつかんだ侍ジャパンの戦いを、さまざまな角度から検証する連載「黄金STORY」。第1回は追加招集の連続で何度も再構築した投手陣の舞台裏に迫る。米国との決勝は5投手の無失点リレーで幕を閉じたが、そこに至るまで何度も紆余(うよ)曲折があった。

( 「よし、これでいこう」。選考へ何度も繰り返したスタッフ会議。5月31日、ようやく一つの骨格にたどり着いた。24人の内定選手。投手の要となる先発要員は、田中将、菅野、大野雄、森下の4人。大会では先発の柱となり防御率1・59、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)によるベストナインに選ばれた山本は、この時点では中継ぎ要員だった。
 6月16日、内定選手発表会見が開かれた。その当日、調子が上がらない菅野が出場選手登録を抹消された。同22日には救援左腕・中川も故障で離脱した。
 菅野と中川の辞退で早急な再構築を強いられた稲葉監督は代替候補の視察に動き回った。最初に決まったのは千賀。会見の数日前、リハビリ途上のエース候補を招集しないことを電話で直接わびた。その上で「もしケガ人やアクシデントがあれば、その時はあるよ」とも伝えていた。もう一人は伊藤。実績ある則本昂や左の松井といった選択肢もあったが、選んだのは日本ハムの新人だった。登録期限2日前の7月3日。大きな決断だった。
 伊藤は球威と気持ちの強さ、縦に落ちる特殊球ともいえるスライダーは国際大会で通用すると考えた。そして大学時代に示した中継ぎの適性も買った。1次ラウンドの結果次第で最大6連戦も想定しなければならない独特な大会方式。当初、伊藤は連戦で駒不足の際の先発5番手も想定されていた。「起用はある程度の想定はするが、調子も見え、大会を通じてできていくものもある」と稲葉監督。伊藤は準決勝、決勝で重要な終盤を任され、千賀も中盤のジョーカーとなり、ともに金メダルに大きく貢献した。
 菅野と中川の辞退がなければいなかった両右腕がフル回転し、大野雄、平良、青柳、山崎らの登板機会は極端に限られた。描いた青写真にこだわらない臨機応変な運用と手札の冷静な選別。両者が結びつき、決勝の無失点リレーにつながった。 (侍ジャパン取材班)

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2021年8月9日のニュース