9回打ち切り導入で監督の采配にも変化 巨人・原監督「勝っていれば長く、負けていれば短く感じる」

[ 2021年4月12日 16:48 ]

3月28日のDeNA戦の6回無死二塁で、代走・増田大を告げる原監督(撮影・島崎忠彦)
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 コロナ下での2年目のプロ野球のシーズン。今季導入された9回打ち切りルールは、戦い方にも変化を与えた。開幕5カード、計88試合で早くも12引き分け。シーズン858試合換算では117試合ペースで、過去最多の74試合(12年)を大きく上回る見通し。その裏にある各球団監督の「21年版」の采配を分析した。(プロ野球取材班)

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 昨季と比べてたった1イニングの違いで、試合の様相はガラリと変わった。9回打ち切りからの逆算。最初から延長戦を想定しないことで、各球団の指揮官は野手の起用、投手の継投で早め、早めに策を繰り出すようになった。

 ケース(1) 3月28日の巨人―DeNA戦。0―1の6回、先頭・大城が二塁打で出塁すると、巨人・原監督はすかさず増田大を代走に送った。

 大城はこの時点で打率・444と好調。しかし原監督は「1点(を追う)、最善策の中でというところ」と、昨季までなら試合の最終盤で起用していた切り札をちゅうちょなく投入した。9回打ち切りを考慮すれば、少しでも早く追い付き、リードを奪うことが不可欠。指揮官は「(9回打ち切りは)勝っていれば長く感じるだろうし、負けていれば短く感じる。どういう風にその時間を使えるかというのが今年の見どころ」。増田大の代走は、この「短く感じる」中での勝負手だった。

 野手の起用より、さらに指揮官が早めに動くのが投手の継投だ。逃げ切りや引き分け狙いはもちろん、さらに「前倒し」の起用も生まれた。

 ケース(2) DeNA・三浦監督は4月11日の阪神戦で、2点ビハインドの8回に勝ちパターンの一角を担う山崎を投入した。裏の攻撃で1点差に迫ると、9回には抑えの三嶋がマウンドへ。指揮官は、12日に試合がないことも念頭に「きょうは試合前から、リードされていてもいく(使う)、という話をしていた」と想定していた。

 追う展開から逆転を狙っての「勝利の方程式」投入。三浦監督は「(9回)打ち切りだから、というのは当然ある」と話した。

 延長12回まで戦っていたかつてのプロ野球が陸上でいう1万メートル走なら、9回打ち切りは1500メートル走に近い。スピード感を保ったまま1試合を駆け抜けるイメージだ。

 ケース(3) 3月31日の日本ハム―西武戦で1―1の7回1死で中田が左前打。栗山監督は代走に中島を送った。

 中田は4番打者。さらにまだ打席が回る可能性があった。そんな「聖域」を崩してでも、目先の1点にこだわる局面がある。この試合は代走を送った後に得点できず、9回に4番に打順が回ってきた。それも勝負の「あや」。栗山監督は「普通に我々の感覚としたら12回までの3イニング、一回りがなくなっている。そこをどう考えるか」。そして「本当に野球って深いなと思うよ」と言った。

 ケース(4) 4月9、10日の楽天―ソフトバンク戦は2試合連続ドロー。ソフトバンクは9日、同点の9回1死一、二塁から3人連続で代打起用するなどベンチ入り野手16人を使い切った。工藤監督は「使えるものは全部使わないと」と振り返った。

 9回打ち切り。いつ終わるか分からない延長戦を想定した時のように、ベンチに選手を残す必要はない。逆に言えば控え選手、リリーフ投手陣を含めたチーム全体の総力が問われる形になる。早めの代打、代走、中継ぎ起用があるとなれば、控えメンバーにもより高い緊張感が生まれる。それがイコール試合の緊張感につながり、観戦しているファンにも伝わるだろう。引き分けの試合が増えることはすなわち、緊迫した試合展開が増えることになる。

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