パ・リーグのパワー野球に対抗できるセ・リーグの新人打者 阪神・佐藤輝や巨人・秋広に見た希望の光

[ 2021年3月6日 13:07 ]

阪神の佐藤輝(左)と巨人の秋広
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 圧倒的なパワーを感じたし、セの野球を変えてくれる期待を抱いた。阪神のドラフト1位・佐藤輝(近大)である。5日のソフトバンク戦。怪力ルーキーはオープン戦初打席で開幕投手を務める石川を粉砕した。それも、外角いっぱいの145キロ直球を逆方向の左翼テラス席まで運んだ。投手にとって本塁打にされることは想定していない球。だから、右腕は「あの打球が入るんだ、凄いなという感じ」と驚き、敵将の工藤監督も「びっくりした」と目を丸くした。

 昨年の日本シリーズでセ覇者の巨人はソフトバンクに2年連続で4連敗という屈辱を味わった。巨人打線は初戦の千賀、2戦目の石川、中継ぎのモイネロらパワーピッチャーに屈した。その石川を、佐藤輝がパワーで圧倒した事実は大きい。

 セは日本シリーズで13年以降、負け続けている。交流戦でも劣勢を強いられ、力の差は歴然だ。10年に当時横浜に在籍した内川(現ヤクルト)が「パは強い。投手は凄い球を投げるし、打者もスイングが力強い」とショックを受けていたことを思い出す。11年にソフトバンクにFA移籍し、パのパワー野球に身を投じた。力と力の戦い。DH制のあるパの伝統であり、それが選手個々をレベルアップさせた。ダルビッシュ、田中、大谷らパワーピッチャーにパの打者は育てられ、投手もまた打者に育てられる。

 セ・リーグの合言葉は「打倒パ・リーグ」」であり、「打倒・ソフトバンク」だ。雪辱を期す巨人にも、将来有望なルーキーが加わった。ドラフト5位の秋広(二松学舎大付」だ。身長2メートルの恵まれた体格を持つ18歳の高卒ルーキーは実戦で結果を出し、1軍に昇格。打球速度は昨季、本塁打、打点の2冠王に輝いた4番・岡本和に迫る166キロ。フリー打撃でも圧倒的な飛距離を誇り、坂本でさえ「僕より飛ばす。純粋に凄い」とうなる。

 巨人は昨秋のドラフトで佐藤輝を1位指名。4球団競合の末に阪神に奪われたが、下位指名で同じ左の打者である投打二刀流の秋広を獲得した。投手としての評価は今ひとつで他球団は手を出さなかったが、巨人は「打者・秋広」を高く評価。過去のドラフトでは決して巧者と言えなかったが、秋広指名には先見の明を感じる。

 もちろん、すぐに1軍で活躍できるほどプロは甘くないが、数年後にはとてつもない打者になるだろう。ソフトバンクの柳田や佐藤輝のように、外角の速球を軽々と逆方向の左翼席へ運ぶ姿を想像している。(記者コラム・飯塚 荒太)

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2021年3月6日のニュース