メッツ加入のリンドア ニューヨークの新しい看板となる予感

[ 2021年1月18日 08:30 ]

リンドア(AP)
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 「メッツはエキサイティングなチームになっているから、その一員になれて興奮と幸福を感じずにはいられない。僕と僕の家族にとっても新しい機会。幸運だよ」

 1月11日、メッツ入り決定後のリモート会見の際、そんな風に述べたフランシスコ・リンドアの笑顔が印象的だった。大富豪のスティーブ・コーエン氏がオーナーに就任以降、積極的な補強を続けるメッツ。その中でも、切り札としてトレードで獲得された27歳のスター遊撃手はニューヨークの新しい看板となっていきそうな予感をさせる。それだけの要素を確実に持っているように思えるからだ。

 メッツが4人の有望株を放出してまで獲得しただけあって、リンドアの実力は申し分ない。俊足強打のラテン系ショートストップというと、かつてメッツの人気者だったホセ・レイエスを思い出すが、リンドアの実力は一枚上。一昨年まで4年連続でオールスター戦のメンバーに選出(昨季はオールスター戦が中止)。18年に38本塁打を放った打力だけでなく、16、19年にゴールドグラブ賞を受賞した守備も折り紙付きだ。

 性格的にも屈託がなく、常に笑顔を浮かべていることから付いた愛称は“ミスター・スマイル”。11日の会見時にも、「僕はピザが大好きだから、(ニューヨークに到着したら)まずピザを食べるよ」と嬉しそうに話していた。「いつも笑顔でいる理由?僕は夢のような生活、望んでいた人生を過ごしているんだからだよ」といった言葉を聞く限り、大都市の重圧も問題なさそうだ。

 ニューヨークにはもともとプエルトリコからの移民が多い。毎年6月第2日曜日にはマンハッタンで盛大なプエルトリカン・デー・パレードが催される。そんな背景もあって、メッツはこれまでロベルト・アロマー、カルロス・ベルトラン、カルロス・デルガド、エドウィン・ディアスといったプエルトリカンを積極的に獲得してきた。12歳で米国に移住したリンドアは英語とスペイン語を完璧に話すバイリンガルでもあるだけに、複数の人種が暮らすこの街に見事にフィットするはずだ。

 このように能力、性格に加え、環境にも恵まれたリンドアが、新天地でどんなキャリアを過ごしていくかが興味深い。気になるのは今季終了後にFAになることだが、コーエン体制下で金満チームとなったメッツと遠からずうちに延長契約を結ぶという見方が多い。ドジャースがムーキー・ベッツ外野手に与えた12年総額3億6500万ドルに匹敵するような大型契約を手にし、この街で長く活躍していくことになるのではないか。

 遊撃手としてはニューヨークではデレク・ジーター(元ヤンキース)以来となるスーパースターとして確立されていく可能性も十分にあるのだろう。まずは21年、移籍1年目にどんなシーズンを過ごすか。依然として続くコロナ禍の中でも、そのハッスルプレーとスマイルで、どれだけの人々の心をつかめるか楽しみにしておきたい。(杉浦大介通信員)

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2021年1月18日のニュース