“居酒屋軍団”ジェイプロジェクトの挑戦 緊急事態宣言で再びピンチも…稼げる野球部を目指して

[ 2021年1月18日 18:05 ]

昨年のチームで主将を務めた片岡(右)にトスを上げるチーム最年長の今井(左)
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 愛知県名古屋市に本拠を置き、昨年の都市対抗大会に8年ぶり2回目の出場を果たした社会人野球・ジェイプロジェクト。日本野球連盟に登録する企業チームでは唯一、居酒屋など飲食業をメインとする同社は、新型コロナウイルス感染再拡大による緊急事態宣言の発令を受け、1月18日から対象地域のほぼ全店で完全休業を決めた。昨年に続き、再び追い込まれた部の存続にも関わる窮地。社と部員は一丸となって、打開策を探る。

 昨年末の12月24日。例年なら忘年会など、多忙を極めるクリスマスイブに部員は本社・ジェイグループホールディングスの新田治郎代表取締役からの招集を受けた。昨チームで主将を務めた片岡新之助内野手(24)が当時の心境を振り返る。

 「急きょのことでしたので。正直、休部を…解散まで、覚悟しました」

 名古屋市内の本社。集合した部員がかけられたのは「現時点で野球部を辞めることは考えていない」とする力強い言葉だった。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響は外食産業を直撃した。同社も例外ではなく、昨年3月1日から11月30日までの第3四半期連結累計期間で19億円超の純損失を計上。当然、年間数千万円の予算の野球部にも逆風は吹いている。それでも平素より「企業スポーツは心の社旗」と公言する代表取締役は部員の前で休部を否定。そのうえで存続し続けるための方法論を説いた。

 「現時点で旗を降ろすことはない。しかしながら非常に厳しい状況には違いない。株主や社員、全員が納得できる形、応援できる形で進めていかないといけない。そのためには、稼ぐことができる野球部になれば、いいのではないか」

 昨年の宣言時とは異なり、現段階では自治体の保有する球場が使用可能なため、練習はできる。休業で、部員達が社業に就くことは当面の間、できなくなったが「稼ぐ」方法はある。普段は居酒屋のホール、バーテンなどで働く部員は、年明けから他業種に出向することを決めた。野球で養われた強じんな肉体と精神力を、労働力として地域企業に提供。得た対価を部の運営費の一部に回す。今は週に1日程度だが、今後は業種を増やしていく計画もある。野球部存続のために、社と部員は一丸となって動き始めた。

 チーム最年長の今井雄一内野手(34)は「だいぶ新鮮です。今までやったことがない仕事ですし、楽しくやらせて頂いてます」と笑う。昨年の都市対抗大会では初戦敗退した試合後のWeb会見で会社への感謝を口にし、大粒の涙を流した。TBS系「サンデーモーニング」内でVTRは流れ、張本勲氏(本紙評論家)からは「俺も涙が出そうで、野球人としてうれしいよ。飲み屋、食べ物屋やってるの?俺、今度、愛知行ったら絶対に行くよ。野球好きなんだねえ、ありがたいよ、野球人としたら。頑張れよ!応援してるよ!」とエールを送られた。普段は名古屋駅前の店舗で店長を務めるだけに「放送の直後は毎日、お客様に“テレビ見ました”と言って頂きました」と言う。09年の創部からのメンバーで、選手としては唯一、2度の都市対抗大会出場を経験。「去年の大会は地に足がついていなかった。今年も出て、もっと注目してもらいたい」と愛するチームのために、野球にも本業にも全力を尽くす。

 片岡の勤務していた店舗は昨年、閉店を余儀なくされた。「野球をやらせてもらっている。その感謝の思いが今のモチベーション。出向は野球をやるためですし、逆に違う業種で働くことで勉強になることも多い。いい経験をさせてもらっている」と話す。昨年から続く出口の見えないトンネル。その中で選手は確実に精神的なたくましさを増した。代表は「野球部を始め、ウチの社員は全員が優秀な人材で、どこの企業も欲しいはず。今はピンチかも知れないが、やるしかない。人や会社任せではなく、自分たちでできることをやるしかない」と野球の、野球部員の底力を信じている。

 選手の出向先への送迎などを行う辻本弘樹監督(51)は「苦しい時期だが、この機会に社会人として得るモノはきっとある」と穏やかな表情で話した。今年の新入部員は19人。代表は「人は宝」とし、採用活動を控えることはしなかった。

 「今は大きくジャンプするために、しゃがんでいる期間。時期が来たら、野球部のみんなに先頭を切って、大ジャンプをしてもらわないといけない」

 野球への思いをコロナによって断ち切られる訳にはいかない。明るい未来を信じ、大きく羽ばたく土台を整える。

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