【阪神のV逸検証(3)】好材料は“代役4番”だった大山の覚醒 悔しさ糧に心技体で大きく成長

[ 2020年11月5日 06:00 ]

矢野阪神2年目の光と影~猛虎に何が起こったか

<神・ヤ23>   9回 1死 サヨナラ本塁打を放ち、笑顔でダイヤモンドを回る大山      (撮影・成瀬 徹)  
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 15年連続でリーグ優勝を逃した中、明るい話題を提供してくれたのが大山だった。一時は本塁打争いでリーグトップに立つなど自己最多だった昨季の14本を大きく更新する27本塁打で打点83も自己最多。入団4年目で期待の大砲が中心選手へと成長を遂げた。

 「やっぱり出られなかった時期というのは悔しかったですし、それでもやっぱり出た時に結果を残せるように準備はしてきた」

 悔しさが一つの大きな力となった。昨季は開幕を含め108試合で4番を務めたが、今季はマルテとの三塁争いに敗れた形となり6月19日巨人との開幕戦はベンチスタートだった。翌20日に初出場したが「5番左翼」で、以降も主に代打出場が続く中、ライバルのマルテが負傷離脱したことでめぐってきたチャンスをしっかりとモノにした。7月5日の広島戦で今季初めて「4番三塁」で先発すると2ランを含む2安打3打点で勝利に貢献。7月だけで8本塁打を放ち一気に上昇気流に乗った。

 飛躍の要因の一つが精神面での成長だった。「最後は打つか打たないか。いろいろ考えたりとかしても、何とかしようという気持ち、必死さが一番大事だと思う」。4番に座る責任感と同時に、開幕直後の経験でチャンスはそうあるものではないと感じられたことで忘れていたハングリー精神がよみがえった。技術よりもまずは気持ち――。昨年は開幕から得点圏で17打席無安打を記録するなど好不調の波が大きかったが今季は月間別でも安定した成績を残す。唯一苦しんだ8月は打率・245、5本塁打、15打点で同20日から4番をサンズに譲った。矢野監督らから助言を受ける光景もあったが「脱出」にはさほどの時間はかからなかった。

 9月に入ると再び上昇し4、5日の巨人戦で2試合連続本塁打を放つなど4日間で4発と量産。月間9本塁打、24打点はいずれも今季の月別でも最高成績となった。この頃から技術面でも変化が見られた。逆方向である右への安打が増えた。9月は29安打中、37・9%にあたる11本。7月の23%(26安打中6本)と8月の28%(25安打中7本)と比較しても明らかだった。根底にあるのは「粘り」。追い込まれてからも「(今年は)冷静にいく自分がいる」とファウルで粘り、出塁へつなげた。敬遠5を含む四球40、出塁率・361は、いずれも4年間で最高の数字となっている。

 巨人・岡本とは2本差で自身初タイトルとなる本塁打王は厳しい状況だが、心技体の成長があったことは確か。真価を問われる来季、不動の4番として活躍することが16年ぶりのリーグ優勝への絶対条件となる。 (長谷川 凡記)

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2020年11月5日のニュース