大谷を襲ったアクシデントに識者見解 張本氏「しばらくは打者に専念を」東尾氏「リハビリ専念も」

[ 2020年8月5日 02:30 ]

アストロズ戦の2回途中、マドン監督(左)に降板を告げられる大谷(AP)
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 エンゼルスは3日(日本時間4日)、大谷翔平投手(26)が右肘付近の屈筋回内筋痛と診断されたと発表した。投球再開まで4~6週間を要する見込み。今季中の投手復帰は厳しくなり、日本ハムの栗山英樹監督(59)、スポニチ本紙評論家らが今後の二刀流のあり方や大谷への思いなどを語った。(敬称略)

 ▼張本勲(スポニチ本紙評論家)の話 二刀流・大谷で私が一番恐れていたのは故障だ。投打の両方の練習をしなければならず、走り込みなども足りなかったのではないか。こうなればしばらくは打者に専念すべきだ。将来的にも二刀流を続けることで、選手生命自体が短くなってしまう可能性もある。私は「投手・大谷」こそ何十年に一人の素質だと思っていたが…。右投げ左打ちだけに、スイングの「エンジン」となる右腕の故障は打撃に影響が出る恐れもある。まずはきっちりと治してほしい。

 ▼東尾修(スポニチ本紙評論家)の話 二刀流というのは、大谷だからこその特長で、捨てる必要はまったくない。ただ、二刀流を成立させるには、先発投手としての役割をしっかり果たせてこそだ。救援では打者出場がままならないし、それでは真の二刀流ではない。トミー・ジョン手術からの復活は投手専門でも苦労するもの。100%投手のことを考える期間を設けてもいいのではないか。今年はシーズン60試合だからこそ、リハビリ専念という選択肢も球団としっかり話し合っていいと考える。

 ▼栗山英樹(日本ハム監督)の話 いろんなことを感じるし、(日本時代に二刀流をサポートした立場から)言いたいこともある。ただ(チームの)中にいないと、どういう状況でどういうふうになっているか分からない。決して全部がうまくいくわけじゃないし、大活躍することも野球。翔平の場合、そういうものを一番分かっていると思う。ただ、それでもイラつくし、納得いかないこともあると思う。そういうもの(前例のない二刀流のリハビリ)をひっくるめて、やらなきゃいけないわけなので。

 ▼槙原寛己(スポニチ本紙評論家)の話 まず今季は投手は諦めるべきだ。下手すると野手としても投げられなくなる恐れがある。今の年齢でDH専任ではきついし、外野をしっかり守ってくれればチームの助けになる。来季以降は本人の思いが最優先だが、打者専念もあり得ると思う。年齢的にもケガがついてくる頃。僕は25歳で左膝を痛めた。21歳で股関節を骨折してからはスピードは捨てた。投手復帰したとしても、球速を求めるのは難しいと思う。投球スタイルを変えるのも一つの考え方だろう。

 ▼深沢英之(元ドジャーストレーナー)の話 トミー・ジョン手術を受けた投手は新しい腱が体になじむまでに2、3年かかる。気になったのは、リハビリ期間にウエートトレーニングで体を大きくしたこと。時間をかけて強い腱をつくっていく段階で、その外側の筋肉が強化されたために、バランスが崩れた可能性はある。速い球を投げる時には当然、弱い方に負荷がかかる。こうなってしまった以上、しっかりリハビリするべきだ。二刀流だからこそ慎重に時間をかける必要がある。

 ▼小原大樹(花巻東同期・現徳島)の話 降板時はイラついているように見え、“肘、大丈夫?”とLINEを送った。本人が一番悔しいはず。二刀流をやめた方がいいという意見も出ているけど、大事なのは本人がどうしたいか。僕自身、自分のスタイルを貫く翔平の姿に刺激を受けている。今まで通り自分の意思を貫いてほしい。投球が駄目でも打撃で貢献できるのが翔平の一番の武器。悲観的にならずに頑張ってほしい。

 ▼ディラン・ヘルナンデス(LAタイムズ記者)の話 大谷はすぐには諦めない性格。もし右肘を再手術すべきだと言われても、PRP(多血小板血しょう)注射を受けて回復を待ち、最低でも来春キャンプまでは今の二刀流を継続すると思う。今、マイナーでもアマチュアでも二刀流選手が増えている。仮に大谷が諦めても、次の世代につながれば意義は大きい。大谷は「世界一の選手になりたい」と言うが、打者専念でもそれは可能。50~60本塁打は打てると思う。

 ▼ジェフ・フレッチャー(OCレジスター記者)の話 2年前の最初の2カ月間、二刀流で大活躍する姿を間近で見た。投打でトップレベルのプレーができる。二刀流を続けてもらいたいし見続けたい。今回はコロナ禍でマイナーでの調整登板ができないなど不運だった。投手復帰初戦の登板後、ロサンゼルス近郊のロングビーチで自軍のマイナー選手に調整登板を一つ挟めればよかったが、打者として戦力であるため、チームにその余裕もなかった。

 ▼奥田秀樹(スポニチ本紙通信員)の話 近年のトレンドは複数ポジションを守らせること。レイズが筒香に三塁、左翼、一塁、DHでプレーさせるのは、数多く打席に立たせるためだ。大谷は将来的にはこの道を目指すべき。現在は“シフト”全盛で飛んできた打球を確実にさばけばいいので、内外野全てを守れる。ゆとりが出れば、レッズのロレンゼンのように外野で出て、救援で1イニングを投げられればいい。大谷は才能に恵まれており、毎日、試合に出るべき選手だ。

 ▼柳原直之(スポニチ本紙MLB担当)の話 投打の才能は米国でも並外れている。メジャーは当初、投手を評価し、いまや打者の評価の方が上回った印象だ。ただ、それは登板機会が少ないだけ。現地で取材した18年4月8日のアスレチックス戦。7回1安打無失点、12奪三振の快投が忘れられない。あの時、大谷はメジャーの強打者を力でねじ伏せ、本拠地は興奮のるつぼと化した。「投手・大谷」は粗削り。まだやり切った感覚もないだろう。このまま打者に絞るとは到底思えない。

 ≪ファン最多は「来季」≫エンゼルスの地元紙「オレンジカウンティー・レジスター」のジェフ・フレッチャー記者が、ツイッターで「投手・大谷」の今後についてファンに緊急アンケートを行った。「大谷の次回登板は」という質問で、「来季」が最多となる38%の得票。2番目が「今季終盤」で26%。「二度とない」が3番目の23.7%と、打者専念を望む声も見られた。

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