「父子鷹」それぞれの最後の夏 静岡商・高田監督&琢登 甲子園の夢は散るも…プロへ完全燃焼あるのみ

[ 2020年7月14日 05:30 ]

プロも注目する静岡商のエース高田
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 夏の甲子園と、そこにつながる地方大会が中止となった2020年。かつてない形で行われる代替大会に、父子で臨む監督と、3年生の選手がいる。どのようにコロナ禍と向き合い、最後の夏の大会に臨むのか。静岡商のプロ注目左腕・高田琢登投手(3年)と晋松(しんまつ)監督(50)らの「父子鷹」の、ここまでの道のりと絆に迫る。(アマ野球取材班)

 目標の先に甲子園がなくても、変わらないのは尊敬する父であり監督である晋松氏と戦う、高校最後の舞台であること。代替大会の初戦は18日(星陵戦)。進路をプロ一本に絞る琢登は、現在148キロの自己最速を150キロの大台に乗せ、父子鷹による県大会制覇だけを思い描く。

 「最後は父や仲間と笑顔で優勝し、“甲子園に出場する力があった”ということを確認して終わりたいです」

 中学時代までは常に父からアドバイスし、捕手役を務めることも。高校入学後は2年時まで会話が少なかったが最近はお互いに意見を交わすようになり、晋松監督は「野球談議が楽しい」と語る。琢登はコロナ禍の休校中、静岡市内の自宅周辺でのランニングやダッシュ、ネットスローを日課に。「体を休ませながらできる自主練に悪い捉え方はしていません」とプラス思考で日々と向き合った。

 甲子園大会の中止決定時も悔し涙はなかった。プロ入りを見据える左腕にとって、立ち止まっているわけにはいかない。一方で、87年夏に静岡の主将として聖地を踏んだ父は「“お父さんと甲子園に行きたい”と入学してきたのに、最後にできなかったことが無念です」と涙ぐんだ。

 チーム活動再開後の琢登の投球は、切り替えの早さと心と体の充実ぶりを物語る。3度の練習試合に先発し計13イニングで15三振、2安打で無失点。プロ11球団のスカウトが訪れた今月5日、昨夏甲子園代表の静岡戦では146キロを計測して7回1安打、7奪三振と好投し「強豪相手にエースとして目標にしていたピッチングができました」と手応えを得た。

 直球にスライダー、カーブ、チェンジアップ、ツーシーム、スプリットと多彩な球種を持つ。さらに、スライダーとカットボールの長所を兼ね備える新球「スラッター」も磨いている。現役時代は同じ左腕だったDeNAの河原隆一編成部スカウティングディレクターは「もっとスピードは出る。変化球をうまく操れるし、楽しみ」と評した。

 父子の夢は元々「大観衆の甲子園で150キロを出し、ドラフト1位指名」。プロになって甲子園のマウンドに上がるべく、まずはこの夏に完全燃焼する。(小澤 秀人)

 ◆高田 琢登(たかだ・たくと)2002年(平14)9月18日生まれ、静岡県富士宮市出身の17歳。小4から野球を始め、6年時はエース兼4番に。清水二中では静岡蒲原リトルシニアでプレーし、3年夏のジャイアンツカップ県予選で最速139キロを計測。日本代表にも選ばれ、全米選手権で優勝。静岡商では1年夏からベンチ入りし、2年春からエース。2年秋は静岡3位で東海大会出場も初戦敗退。1メートル77、77キロ。左投げ左打ち。

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