うちわ、カブトムシ…中日ドラ3岡野を支える先輩・松永との絆

[ 2020年7月8日 10:00 ]

昨年11月、岡野(左)のプロ入りと松永の誕生日を祝うパーティーで
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 中日のドラフト3位・岡野祐一郎投手(26=東芝)が2日の阪神戦でプロ初勝利を挙げた。翌3日付けのスポニチ本紙には、東芝時代にお世話になった先輩・松永隆太外野手(33)からの激励メッセージを掲載した。

 なぜ、松永に激励メッセージをお願いしたのか。スペースの都合上、紙面では詳しく載せきれなかった2人の絆を紹介したい。

 今年1月、プロ入りの際、岡野が選手寮「昇竜館」に持って来たのが1枚のうちわだ。そのうちわは東芝の応援用うちわで、ユニホーム姿の松永の写真がデザインされている。

 岡野は東芝2年目の時にドラフト指名漏れの悔しさを味わった。その後にペアを組んだのが松永だったのだ。東芝はクラブハウスがないため、寮生と妻帯者など自宅から通う選手がペアを組み、日中は寮生の部屋で服を着替えるなど生活を共にする。

 「松永さんは若手よりも練習やケアにこだわっていた。休んでいる暇なく野球のことばかり考えていて」

 東洋大時代に明治神宮大会2連覇など全国制覇を経験後、東芝に入社し10年以上、社会人チームでプレーするベテラン・松永の野球に向き合う姿は、岡野にとって生きた教材だった。

 そして1つの誓いを立てた。「これぐらい頑張ってダメならプロ入りを諦めよう」。勝負の3年目、今まで以上に一心不乱に野球に取り組んだ。外野手である松永にも積極的にアドバイスを求めた。

 2人の信頼関係の深さが分かる出来事がある。昨夏、岡野が捕まえたカブトムシを部屋で飼い始めた。カゴには「隆太」の名前が貼ってあったという。「先輩である僕の名前を勝手につけて飼ってた。面白いと言うか変なやつです」と松永は述懐する。

 現在、選手への直接取材はできないため、岡野に真相を聞くことはできないが、カブトムシの名前にするほど慕っていたことがうかがえる。

 岡野がうちわを持ち込んだのも、松永とともに過ごした時間があったからこそプロ入り出来たことを「忘れないように」という理由からだ。

 「1勝ぐらいで満足するんじゃないぞ」という松永の激励は、裏を返せば「これから、いっぱい勝てよ」という愛のあるメッセージ。先輩の応援を受けながら、岡野は9日のヤクルト戦でプロ初勝利後、初の登板に挑む予定だ。(記者コラム・徳原 麗奈)

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