【猛虎最高の瞬間(8)】史上最高の守護神・球児 不惑を迎えてなお挑戦は続く

[ 2020年6月9日 08:30 ]

19年9月30日、中日戦でプロ通算241セーブ目を挙げ、ガッツポーズを決める藤川
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 創刊72年目のスポニチ紙面を掘り起こし、偉大な選手たちが阪神のユニホームで打ち立てた「猛虎最高記録」と、その瞬間に迫る連載の第8回。藤川球児投手(当時39)が球団最多241セーブ(更新中)を挙げた2019年9月30日にスポットライトを当てる。

 【2019年9月30日 阪神3―0中日】その日、1年目の矢野阪神は特別な勝利を挙げた。翌日付スポニチは1、終面連版で「奇跡CS大逆転」と報じた。カクテル光線に彩られた鳥谷敬と藤川球児のハイタッチの写真が映える。その藤川の記事は2面中段にあった。中継ぎ全体を扱う見出しだったが、主役は守護神だった。

 節目の試合で、今後も更新するであろう暫定の「猛虎最高」を打ち立てた。勝てば逆転クライマックスシリーズ(CS)進出が決定する大一番。3点リードの9回のマウンドを任されたのは、もちろん背番号22だった。

 1死無走者から福田永将に中前打を浴びたが、ビクともしない。まずは堂上直倫を空振り三振に料理。続く高橋周平も追い込み、最後はフォークで空振り三振に仕留めた。このシーズン16個目のセーブで、自身の「猛虎最高記録」も241セーブに更新。マウンド上で、逆転CS進出決定の瞬間を迎えた。

 03、05年の優勝を知るベテランは試合後、「今までにないタイガースの形。最後にチームとして強くなってきたのは自分はあまり見たことがない。チームが成長している中に自分も入れていることが誇り」と胸を張った。例年、失速傾向だった夏場以降に進撃した若き猛虎に、新時代の息吹を感じ取っていた。

 入団当初は先発だったが、04年途中から中継ぎに転向し、台頭。05年9月9日、広島戦(甲子園)で初セーブを挙げ、「チームが勝ったことが一番うれしい」と喜んだ。13年からは海外へ活躍の場を求め、貴重な経験をたずさえて16年、再び阪神に帰ってきた。復帰4年目の39歳シーズンは、全盛期を彷彿させる「火の玉直球」とフォークが切れた。7月下旬から抑えに返り咲き、チーム躍進の原動力となった。そして40歳シーズンの今季も、歩みは止まらない。

 残り7セーブで日米通算、残り9セーブでNPB通算250セーブ到達。21セーブを挙げれば14年の中日・岩瀬仁紀の20セーブを抜いて40代投手の最多セーブ記録も更新する。3日の練習試合・広島戦で腰の張りを訴えて緊急降板したが、幸いにも軽症の見込み。19日から、「猛虎最高の守護神」藤川のさらなる挑戦が幕を開ける。(惟任 貴信)

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