韓国プロ野球 無観客で開幕 キーワードは「徹底」と「一体感」

[ 2020年5月6日 05:45 ]

 5日、無観客で開幕した韓国プロ野球(聯合=共同)
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 韓国のプロ野球が5日、当初の予定より38日遅れて無観客で開幕し、5試合が行われた。韓国では政府の徹底した防止策により新型コロナウイルスの新規感染者数が大幅減。韓国野球委員会(KBO)も徹底かつ一体感のある取り組みで開幕にこぎ着けた。日本のモデルケースとなるか。韓国プロ野球に精通したジャーナリストの室井昌也氏(47)に聞いた。

 韓国に「ヤグ(野球)」が帰ってきた。プロ野球のリーグが開幕するのは台湾に次いで世界で2番目。「国にも(感染防止策の)スピード感があった」という室井氏は、「国が防止策を徹底したように、KBOも徹底した。一体感を持って取り組んでいたし、“やる”と決めた時の徹底ぶりには驚かされた」と韓国球界の対応について語った。

 KBOではプロジェクトチームを立ち上げ、感染防止のためにA4判44ページのマニュアルを作成。マスク、手洗いの奨励などはもちろん、各球場の選手ら球団関係者と報道陣の動線、立ち入り禁止区域、球場から最も近い保健所の所在地、球団関係者が発熱した具体例16ケースなどが事細かく記されている。

 さらに球団関係者以外でも「例えば球場に出入りするケータリングの業者など、関わった人全てに対して、発熱の症状が出たらすぐにPCR検査を行った」と室井氏。これは2軍の選手も同様で、この措置を「各球団が徹底して守った」(同)結果、1軍の監督、選手らユニホーム組の感染者は1人も出ていない。今後、1人でも感染者が出たらリーグはストップする。その危機感が球界の一体感を生み出した。

 韓国ではインターネットで中継を見る層が多く、国内では「無観客ならもっと早く開幕できたのでは?」との声もあったという。球場間の移動は全てバスを使用。最長でも4時間だという。飛行機、新幹線での移動が不可欠な日本に比べて感染リスクは低い。シーズンは全144試合の開催を予定。7、8月を除いてダブルヘッダーを行い、8月18日からは1軍選手枠33人、出場選手枠31人と例年より各5人ずつ多くし、過密日程に対応する。

 「韓国も特別なことはやっていない。特効薬はないと思う」と室井氏。キーワードは「徹底」と「一体感」。同じアジアの国として、日本でも球音が復活する日が待ち遠しい。

 ▽韓国プロ野球リーグ(KBOリーグ) 韓国野球委員会(KBO)の統括で1982年、6球団でスタート。現在は10球団が参加。1リーグ制で各球団年間144試合を行い、勝率順でレギュラーシーズンの順位を決定。上位5位までがポストシーズンに進出し「韓国シリーズ」で優勝チームを決める。日本プロ野球出身でKBOリーグに所属した選手には、ヤクルトの高津臣吾監督、元巨人の門倉健らがいる。

 ◆室井 昌也(むろい・まさや)1972年(昭47)10月3日生まれ、東京都出身の47歳。02年から韓国プロ野球の取材を行い、04年から「韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑」を毎年刊行。スポーツ朝鮮でコラムも担当している。韓国野球委員会(KBO)から記者証を発行されている唯一の外国人記者。

 《開幕1号は金賢洙》韓国でも5月5日は「こどもの日」。当初予定されていた3月28日から38日遅れの開幕で、ファンはインターネットやテレビ中継などで球春到来を楽しんだ。開幕1号アーチをマークしたのはLGの金賢洙(キムヒョンス)。昨年11月のプレミア12の日本との決勝でも一発を放った強打者は、斗山戦の3回に左翼に2ラン。オリオールズ時代の同僚であるオリックス・ジョーンズは自身のツイッターで「驚くべきパワーの俺の相棒!」と祝福した。試合も8―2で快勝した。

 スタンドは無観客だったが、応援団はマスク姿でベンチ上から声援。SKの本拠地球場では客席にマスク姿のファンの写真パネルが並べられた。KTはテレビ会議アプリ「Zoom」でファン300人を先着で募集。大型ビジョンなどで応援している姿を流した。

 KBOは審判に口を覆うマスクや手袋の着用を義務化。選手にも素手でのハイタッチ、握手の自制を要請している。韓国政府が5日に発表した新規感染者数は3人で、いずれも海外からの入国者。KBOは今後の感染状況を見ながら、観客の段階的な入場を模索していく。

 《米で生中継》○…米スポーツ専門局のESPNが韓国プロ野球の放送権を取得し、サムスン―NC戦を生中継した。現地の中継映像にリモートで実況と解説を付け加える形で放送。ドジャースの主砲ベッツもツイッターで「KBOが戻ってきた。みんな見てるぞ!」と喜びの声をつづった。ESPNは1日1試合の生放送に加え、再放送も行う。

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