【奈良】智弁学園・坂下主将 涙の甲子園切符「練習はやっぱり嘘をつかないな」

[ 2019年7月29日 18:23 ]

第101回全国高校野球選手権 奈良大会決勝   智弁学園12―5高田商 ( 2019年7月29日    佐藤薬品 )

<奈良大会 智弁学園・高田商> 奈良大会を制し甲子園出場を決めた智弁学園・坂下は優勝旗を受け取る (撮影・後藤 大輝)  
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 最後の打者を併殺打に抑えて夏の甲子園への切符を手に入れた瞬間、主将の坂下はあふれる思いをこらえることが出来なかった。「今までつらい思いとかをみんなでしてきて。そのみんなと甲子園に行けるということになって、こみ上げてくるものがありました」。試合が終わり、校歌斉唱を終えた後もしばらくは涙が止まらなかった。

 163センチと身長は小柄ながらも、チームを引っ張る存在感は大会を通じて絶大だった。この試合は6打数5安打4打点と大車輪の活躍。特に2回無死1塁から左翼スタンドに放り込んだ一発は圧巻だった。左打者ながらも、強靱な体幹を活かしたスイングで逆方向へ大きな放物線を描いた一発。この本塁打が今大会通算5本目。個人での奈良大会通算本塁打記録を更新する一打となった。

 それまで個人での本塁打記録を持っていたのが、現在智弁学園の監督を務める小坂将商氏(41)だった(他2名が4本で並んでいた)。指揮を執る恩師の目の前で、記録を破る一発。小坂監督は「記録はいつか抜かれるものですから。それを教え子が抜いてくれたというのは嬉しい」と頬を緩ませた。当の本人は「3番としてとにかく後ろに繋いでいくということしか考えていなかったので、一発を狙っているわけではなかった」と答えたが、「みんな(チームメイト)から言われて記録のことを知ってはいた。偉大な監督さんを喜ばせることができて嬉しい」と笑みをこぼした。

 昨秋の奈良大会準々決勝で天理に4ー12で惨敗。「新チームが始まってから、キャプテンは俺で良いのかとずっと悩んでいた」。主将として責任を背負い込み、毎日やめたいと思っていた時期もあったという。

 それでも重責を果たし続けた。全ては昨春の選抜大会に出場した経験から。「先輩たちに連れてってもらい、2年生で出させてもらった。今度は自分たちが後輩を甲子園に連れていくという気持ちしかなかった」。周りが自然とついてくる、背中で引っ張る主将を目指し続けた。秋季大会の敗戦後は、ほぼ毎日早朝5時半から1200スイング振り込むことを続け、体幹を鍛え続けた。今日の試合を終えた後「練習はやっぱり嘘をつかないなと思いました」。弛まぬ努力の果てに、甲子園出場を掴み取った。

 小坂監督は坂下の主将について「最初はうまくいかなかった。きつい言葉をかけたことの方が多かった」。それでも「2年から試合に出てますから。この夏に掛ける思いは強かったと思う。周りから色々助言を聞いたりもして、よくやっていった。立派なキャプテンだと思います」とねぎらった。最後に、本大会での目標を聞かれた主将は力強く答えた。「奈良でしんどい戦いを続けてきた。今まで戦ってきた高校の分の思いを背負って、一戦一戦戦っていきたいです」。気遣いの出来る主将らしい意気込みだった。

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