津田学園・前 170球の熱投の末力尽く…佐川監督「投げ抜いたことに感謝している」

[ 2019年3月25日 15:27 ]

第91回選抜高校野球大会第3日第1試合 1回戦   津田学園0-2龍谷大平安 ( 2019年3月25日    甲子園 )

<第1試合 津田学園・龍谷大平安>延長11回表1死一、二塁、龍谷大平安・奥村に適時二塁打を打たれガックリの津田学園・前(右から2人目) (撮影・奥 調)
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 170球の完投劇は勝利に結びつかなかった。津田学園(三重)のエース・前佑囲斗投手(3年)は9回までゼロを並べ龍谷大平安打線を“完封”しながら味方の援護に恵まれず、延長11回に2点を奪われ1回戦で散った。

 3番・多田からこの日最速の140キロ直球で空振り三振を奪うなど、初回から全力で飛ばした。4回1死二、三塁のピンチでも続く打者を連続三振に。だが「自分の1球で試合が動く緊張感の中でやっていたので、疲れたところはある」と話すように、6回に多田の投ゴロを処理してから、右手の親指、人さし指、中指が何度もつりかけた。それでも「平安打線は俺に任せろ」とピンチの場面で声をかけてくれた阿萬田のミット目がけて腕を振り続けた。9回2死二塁のピンチで三尾を二ゴロに打ち取ると、大きく口を開けてほえた。

 だが奮闘もむなしく、延長11回1死一、二塁から奥村に左越えの適時二塁打を浴び、ついに得点を奪われた。「メンタル面も疲れていた。11回は体の開きが早くなってしまった」。164球目。意図せず高めに浮いたボールだった。

 支えてくれる家族のためにも勝ちたかった。兄・恵弥さんは2年前の夏、津田学園が甲子園に出場した際、腰の手術のためベンチメンバーに入ることができなかった。当時1年生だった前は3年生だった兄と寮で同部屋。常にその背中を追いかけてきた。「自分が教えてきたことを思い出して、打たれても楽しんでほしい」と三重を発つ前にメッセージを受け取り、思いを託された。小学生のとき、兄と遊んでいてロフトから落ち、右手首を骨折して全治3カ月の重傷を負ったこともある。救急車を呼び、治療に付き添い、懸命に支えてきた母・千鶴さんにも「これで甲子園連れて来たったやろ」と兄の果たせなかった夢をかなえたことをうれしそうに報告していた。高校に入学してから毎晩1・2キロの米を食べ、体重は68キロから88キロに。球速も最速128キロから148キロと、大幅な成長を遂げてきた。だからこそ、その成果を見せつけたかった。

 2年前の夏、津田学園は1回戦で藤枝明誠に延長11回サヨナラ勝ち。前はボールボーイを務め、青々とした芝生を目に焼き付けて憧れた。自分も先輩たちに少しでも近づきたいと、グラブに「感動を与える」という文字を刺しゅうした。その再現はできなかったが、一人でマウンドを守り抜いたその姿は、佐川竜朗監督も「本人が『行きたい』と言って託した。投げ抜いたことに感謝している」と評したように、多くの人々に感動を与えた。「自分がエースなんだということを忘れず、15回まで投げられるような体力をつけて夏に戻ってきたい」。前は前のめりに、前だけを見つめた。

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