球界に押し寄せる“時短”の波…野球ファンが本当に見たいものとは

[ 2019年3月16日 09:00 ]

ファンへのサインに応じる大谷
Photo By スポニチ

 時短、時短、時短…。まるでどこかの冴えないブラック企業のようだ。球界に押し寄せる試合時間短縮への波が止まらない。

 大リーグ機構は選手会との間で合意した新ルールを発表した。日本人の目を引いたのは、大谷翔平の影響で来季から新設される「Two―Way Player(二刀流)」という新ポジション。

 新人王を獲得した昨季のセンセーショナルな活躍が認められた側面は間違いない。とはいえ、これも大リーグが進める時短の一部分。機構側が減らしたかったのは、大リーグに昔からあり、昨年特に目立った野手の登板だ。

 点差が開き勝敗が決した試合でブルペンの疲弊を避けるため、たまに目にするシーン。ヤクルト・青木や、マリナーズ・イチローもマーリンズ時代に登板経験がある。ただでさえ頻繁な投手交代は試合時間を長引かせる。加えて本職ではない野手が投げるものだから、ストライクが入らなかったり、連打され火だるまになることも多い。リーグの平均試合時間を、確実に伸ばしている要素の一つだ。

 新ルールでは延長戦か、6点差以上開いた試合でない限り、「野手」で登録された選手は登板できない。もともと延長戦で投手が足りないケースや、大差のついた試合で用いられていた戦法ではあったが、今回の新ルールは「慎むように」と向けた一つのメッセージにはなる。

 目を移せば、世界野球・ソフトボール連盟(WBSC)は、2028年ロサンゼルス五輪での野球・ソフトボールの競技復活へ向けて、20年東京五輪後の国際大会は全カテゴリーで7イニング制とする方針を打ち出した。「1時間は短縮できる」とはリカルド・フラッカリ会長。24年パリ五輪落選は球場設備や選手数の問題以上に、試合時間の長さが世界的な普及の障害になっているという位置付け。でも、7イニング制の野球がロサンゼルス五輪で復活して、野球ファンは本当にうれしいの?

 ここからは個人的な話。プロ野球好きな少年として都内で過ごした。2~3カ月に一度、両親に連れて行ってもらえる後楽園球場、東京ドーム、神宮、西武球場での野球観戦が楽しみだった。何よりプロが使う野球場にいられることがうれしかった。2時間弱の投手戦では正直消化不良。3時間超、または延長戦がお得感満載で、心の底から望んでいた。もっとも家でテレビ中継を見ていて、30分の延長枠にも入りきらず、ラジオなどでその後まで追うのは好きではなかった。

 ファン層の拡大はどの業界でも永遠のテーマだろうが、従来からのファンを裏切っては足元もおぼつかない。野球ファンのニーズは、本当に見たいものは何なのか。時短の前に、もう一度球界全体で再考すべきではないだろうか。(記者コラム・後藤 茂樹)

続きを表示

この記事のフォト

「第91回(2019年)選抜高等学校野球大会」特集記事

「稲村亜美」特集記事

2019年3月16日のニュース