“オコエ級身体能力”ハーフ中学生が名門・横浜高野球部入りへ

[ 2016年2月23日 10:30 ]

東練馬リトルシニアの万波

 楽天・オコエ級の身体能力を持つスーパー中学生が、今春、神奈川の名門・横浜高校に進学する。東練馬シニアに所属する万波中正選手(15)。1メートル88、90キロと中学生離れした体格から繰り出すパワーはプロ顔負けだ。高校では投手ではなく、外野手として勝負。甲子園優勝、プロ野球選手、そしてメジャーリーガーと壮大な未来予想図を描く金の卵が高校球界に飛び込む。(青木 貴紀)

 顔つきはまだ幼い。しかし、その体つきは明らかに規格外のスケールだ。埼玉県和光市の荒川河川敷。東練馬シニアのグラウンドで同級生とともに汗を流す万波は、一人だけ異次元の打球音を響かせていた。

 「接戦で勝ったときの喜びが好き。サヨナラ勝ちとか凄い楽しい。誰かがダメでも別の人がカバーできるのも良い」

 野球の魅力を語る笑顔はあどけない。コンゴ出身の父・ウィリーさんと、日本人の母・有里子さんの間に生まれたハーフ。15歳にして足のサイズは30センチ。太腿は元スピードスケートの清水宏保氏が98年長野五輪で金メダリストを獲得した当時より4センチ太い69センチだ。想像の域を越えた数値が並ぶ肉体は「親から授かったものです」と感謝する。

 小学校入学時、身長はすでに平均を15センチ上回る1メートル35。「とにかく米をたくさん食べてました」と、6年間で1メートル77まで成長した。中学に入ると1日8合の米を平らげた。昨年は同シニアのエースとして最速138キロの直球を武器にチームを全国大会4強に導いた。横浜高では投手ではなく外野手として挑戦する考えだ。

 怪力を証明する「万波伝説」がある。小学6年時、グラウンドでの打撃練習で高さ5メートル以上の防球ネットを越えて民家に直撃する場外弾を連発。金属から木製バットに替えたものの状況は同じで、民家の住民から「勘弁してください」と頭を下げられ、一人だけフリー打撃が禁止となったという。「木の方がしなるので打ちやすいし、気持ち良い」と研ぎ澄まされた感性も持っている。

 中学では陸上部との「二刀流」だった。1年時に100メートルハードルで都大会2位。昨年は砲丸投げで都大会を制し、全国大会に出場したほど、身体能力はずばぬけている。2歳年上の姉・アイシャさんも中学3年時に砲丸投げで全国大会4位に入賞したトップアスリート。「姉と一緒に練習したり、助言をもらってました」。異なる種目ながら姉弟で切磋琢磨(せっさたくま)している。

 胸にはどでかい野望を秘めている。「高校では甲子園で日本一が目標。卒業後はプロ野球、最終的にはもっと上を目指したい」。さらに上の舞台――。それはメジャーリーグを指す。憧れは、メジャー屈指の長距離砲、マーリンズのスタントンだ。「日本からでもメジャーで豪快な本塁打を打てる選手を出せる、というのを示したい」。米国で特大アーチを描く日を夢見て、まずは甲子園のスターを目指す。

 ▼赤星憲広氏(元阪神、スポニチ本紙評論家) 万波君の練習を見たことがありますが、まず驚いたのが下半身の強さ。打撃は荒々しいスイングではなく、テークバックもステップも小さめ。ヒッチなどの変なクセもなく、構えたところからそのまま振るようなコンパクトなスイングですが、強力な下半身を使えていてフォローもしっかり取っているので飛距離は物凄く出ます。目標にしていると言っていたスタントンに確かに似ています。ハーフということでオコエと比較されやすいですが、選手のタイプは違う。万波君の方がホームラン打者というイメージですね。

 ◆万波 中正(まんなみ・ちゅうせい)2000年(平12)4月7日、東京都生まれの15歳。小学2年時にブルーフェニックスで軟式野球を始める。東練馬シニアでは3年時に第43回日本選手権大会4位。遠投105メートル、50メートル走は6秒3。好きな言葉は必勝不敗。1メートル88、90キロ。右投げ右打ち。

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