“まさか”の声に原監督「失礼だよ!」 大田が2年ぶり代打逆転弾

[ 2014年9月18日 05:30 ]

<広・巨>8回、逆転2ランの大田(左)を笑顔で迎える原監督

セ・リーグ 巨人9-7広島

(9月17日 マツダ)
 6年目の大器が大仕事だ!巨人・大田泰示外野手(24)が17日の広島戦で、1点を追う8回に代打で登場し、左翼席に逆転2ランを放った。地元・広島で実に2年ぶりの一発となるプロ3号。偉大なOB・松井秀喜氏の背番号55を受け継ぎながら期待に応えられず、今季から心機一転「44」に変更した男が、優勝へのラストスパートでド派手に加わった。チームは4点差を逆転し、マジックは8。9連戦を7勝2敗で乗り切り、歓喜のゴールはすぐそこだ。

 大田は目を見開いて喜ぶ原監督と力強くグータッチを交わした。2年ぶりの一発は代打逆転2ラン。前回打ったのも、地元・広島だった。三塁ベンチ前で出迎えた矢野らと踊りながら全身で歓喜を表現した。

 「無我夢中です。なかなかこういう良い試合で、こういう打撃をしたことがなかったので。2年ぶりに広島で打てて良かったです」

 6―7で迎えた8回無死一塁。送りバントも考えられる場面だが、代打・大田はネクストバッターズサークルで指揮官に「自分の思うように打ってきなさい」と声を掛けられた。この一言で「楽に打席に入れた」。中田の低めのスライダーに泳がされながらも、最後は左手一本で左翼席に運んだ。722日ぶりの感触。ヒーローインタビューで「勝ちにつながる一発が打ててうれしかった」と絶えず笑みを浮かべた。

 再出発の一年だった。入団時に松井秀喜氏が背負い、6年間空き番になっていた背番号「55」を受け継いだ。松井氏と常に比較され、期待と重圧を背負いながらも結果を残せず2軍で4番に座る日々。「未完の大器」とやゆされ、「55番を外せ!」とヤジを浴びせられることもあった。6年目の今季。東海大相模の大先輩でもある原監督から「心機一転、頑張ってみよう」と言葉を掛けられ、背番号が「44」に変わった。「野球をやることに変わりはない。一生懸命やるだけ」と受け入れ、自らを奮い立たせた。

 打撃の意識も変えた。2軍スタートとなった春季キャンプ初日。臨時コーチを務めた松井氏が、真っ先に指導したのが大田だった。テークバックで球との距離を取ってから振り抜くことを教わった。豪快に引っ張る打撃が真骨頂だが「球の見極めができていなかった」と気付き、逆方向への打撃練習を繰り返した。8月8日に1軍昇格。途中出場の日々が続くが、東京ドームの試合前はただ一人、3度のフリー打撃を欠かさない。努力は実り、しっかりと球を呼び込んで変化球に対応。自身の苦悩も振り払った。

 試合後、報道陣から「まさかの…」と振られた原監督は「失礼だよ!」と上機嫌で返し、「彼にとって(ホップ、ステップ、ジャンプの)ホップという1本になってくれればいいですね」と目を細めた。優勝マジックは1桁の8に。それでも「まだまだ僕らにとっては遠い数字」と話した。

 潜在能力の高さは誰もが認める。大田は言う。「とにかくチームの勝利のために全力プレーで貢献したい」。生まれ変わった背番号44は、9連戦の最終戦で大きな仕事を果たし、リーグ3連覇へチームを加速させた。

 ≪代打では初めて≫大田(巨)が8回に代打逆転2ラン。12年9月25日広島戦以来通算2年ぶり3本目の本塁打で、代打では初めて。前日までの代打成績は15打数1安打(打率・067)、1打点、6三振、2四球。通算18打席目の初アーチがチームに勝利を呼び込んだ。これで今季巨人の代打本塁打はセペダ3、高橋由2、ロペス、横川、亀井各1を合わせて9本。巨人のシーズン最多は84、03年にマークした11本。球団記録にあと2本に迫った。

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