生涯ハム!ダル「ファイターズが一番いい」

[ 2009年10月7日 06:00 ]

<日・西>優勝の瞬間、笑顔でベンチを飛び出すダルビッシュらナイン

 【日本ハム5―4西武】歓喜の胴上げを終えると、ダルビッシュは梨田監督と熱く抱擁した。「余韻に浸る余裕はないですよ。でも(胴上げでは)梨田監督の背中に触りました」。出場選手登録を外れたままでの優勝。試合中は黒色のTシャツ姿で、時には両手を合わせながら祈るような表情で戦況を見守った。絶対エースの存在は、2年ぶりの覇権奪回には欠かせないものだった。

 「(自身は)この1カ月間、全然仕事をしてないんで複雑な気持ちです。でも(今季は)凄い成績だとは思ってないけど、恥ずかしい成績だとも思ってないんで」
 リーグ2位の15勝に、防御率1・73は断然の1位。ずぬけた存在感を示し続ける男はメジャーからも熱い視線を浴び続けている。昨年5月には米スポーツ専門局の電子版が、ダルビッシュがポスティング移籍を決断すれば落札金は松坂を大きくしのぐ7500万ドル(約67億円)と試算。WBC準決勝、決勝ではメジャーのスカウト陣の前で抑えとして球速100マイル(約161キロ)を計測。評価を不動のものとした。
 米国留学経験のある両親が英会話教室を経営していたこともあり、米国は“異国”ではなかった。ただ「決してメジャーが最高峰だと思わない。ドキドキする勝負は日本国内でもできる」と親しい人間には漏らし続けてきた。その一方で、球団内にはダルビッシュがポスティングを希望すれば、容認すべきではないかとの見解もあった。今季年俸は2億7000万円。今後も高騰すれば、球団経営の観点から“体力”は持たない。今春には球団関係者が、非公式ながらメジャー移籍の意思を問いただした。気色ばんだ表情で返ってきた答えは「そんなに追い出したいのですか?僕はファイターズが一番いいんです」。事実上の“生涯ハム”宣言だった。
 この背景にはチームへの深い感謝がある。ルーキーの05年に喫煙問題で無期限謹慎処分を受けた。冷たい視線を浴びるのは覚悟していた。しかし、当時のヒルマン監督をはじめ、ナインから掛けられた言葉は「オレたちは待っているからな」。短いその一言が“宝物”となった。だからこそWBCで酷使した体にむち打ち、チームのために投げ続けた。右肩、腰、股関節…。あちこち悲鳴を上げた。鎮痛剤を飲み、座薬を入れマウンドに上がったが、限界だった。2度の出場選手登録抹消。「もう今季は投げられないかも…」と弱気な言葉も飛び出したが、優勝を成し遂げた今、視線は前だけを向いている。
 「すぐにでも(マウンドに)立ちたい。そのためにしっかり準備をしている。CSでもしっかり(マウンドに)立てるよう頑張る」。前日にはブルペン投球を再開。時を合わせるかのように伸ばしていたあごひげもそった。「嫁さん(紗栄子夫人)から“気持ち悪いから”って言われたんで」。それは照れ隠しで、完全復活への誓いに他ならない。ビールかけは自粛。美酒は日本一になったときに思い切り浴びればいい。

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2009年10月7日のニュース