苦しみ、つらさ、痛みの末に…イチロー歓喜

[ 2009年3月25日 06:00 ]

優勝トロフィーを手に笑顔のイチロー

 【WBC決勝・日本5-3韓国】ファウルで粘りながら、イチローの頭には雑念が浮かんでいた。延長10回2死二、三塁。林昌勇が投じた8球目、外寄りのシンカーを中前にはじき返した。

 「打席で?めちゃくちゃいろんなことを考えていました。ここで打ったらオレ持ってんだなあとか、今、ごっつい視聴率だなあとか。そういう時はあまりいい結果が出ないんですけど、出ましたからねえ」

 初回の中前打でチームを勢いづけた。7回はバント安打でチャンスを広げ、9回は右翼フェンス直撃の二塁打。世界一を決める試合で、WBCでは自身初の4安打をマークした。それでも塁上では決して表情の変化を見せなかった。「普段と変わらない自分でいることが僕の支えだからです」。信念は貫いた。

 宮崎合宿からチームの中心にいたが、大会では不振に陥った。東京ラウンド3試合で14打数4安打。米国でも調子は上がらず、準決勝までの5試合は24打数4安打。リーダーとしてナインを引っ張ることが義務づけられていたが結果は伴わなかった。「個人的には想像以上の苦しみ、つらさ、痛覚では感じない痛みを経験した」の言葉は本音だった。ただ、不振だからこそ、得たものもあった。敗者復活戦のキューバ戦。自らの判断で送りバントを試みたが失敗。ベンチに戻ってナインに謝罪した。「ごめん!オレもへこみそうだわ…」。隣に座る城島は言った。「大丈夫ですよ。イチローさんがしっかりするまでオレたちがつなぎますから」。リーダーは、頼もしい仲間たちに引っ張られていた。

 4年後は40歳目前。日の丸のユニホームを着てプレーするのは今回限りの可能性は高い。シャンパンを浴びたユニホーム姿で臨んだ会見では、次回大会についての質問が飛んだ。「むちゃな質問しますよね。4年後は生きているかも分からないですからね。“どうなんでしょうかその質問は”って感じですね」。先のことは考えていない。イチローの頭には、満足感だけが残った。

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2009年3月25日のニュース