稀勢 綱取りへ綱渡り…連敗なら“昇進0%”も差し違えで1敗死守

[ 2016年7月16日 05:30 ]

妙義龍(左)を突き落としで下し連敗を免れた稀勢の里

大相撲名古屋場所6日目

(7月15日 愛知県体育館)
 綱獲りの大関・稀勢の里が辛くも優勝争いに踏みとどまった。妙義龍戦はつかまえきれずに防戦一方となり、土俵際で捨て身の突き落としを放つのがやっと。軍配は相手に上がったが物言いがつき、協議の結果、行司軍配差し違えで1敗を守った。ただ1人の全勝だった平幕の逸ノ城に土がつき、1敗は横綱・白鵬ら9人が並ぶ大混戦となった。

 相撲内容では完全に敗れていた。それでも稀勢の里は白星を拾った。土俵際で放った左からの突き落とし。ビデオ判定では自身の右足が出るよりも先に妙義龍の体が土俵についており、行司軍配差し違えで勝ち名乗りを受けた。稀勢の里自身も相手が先に落ちるのが見えていたというが、冷や汗ものの勝利となった。支度部屋では「こういう勝ちを、また明日につなげていきたい」と前を向いた。

 5日目の栃煌山戦は攻め込みながら土がついた。この日の朝稽古後には「今日から中盤。切り替えて」と敗戦ショックを振り払うように自らに言い聞かせたが、持ち味は出せなかった。立ち合いは腰が高く、右からおっつけられるとつかまえられない。喉輪で上体を起こされると、はたく形となって呼び込んだ。左四つに組み止めれば安定感抜群だが、それができないと苦しめられる。「左を差せなかった?そこだね」と苦戦の原因ははっきりしていた。

 苦戦しても負けなかったことで綱獲りのチャンスはつながった。15日制となった1949年(昭24)夏場所以降、31人の横綱が誕生しているが、昇進を決めた場所で連敗した力士はいない。6日目で全勝がいない混戦場所では、2敗でも優勝の可能性が消えたわけではないが、平幕への連敗となると横綱昇進に向けては印象が悪くなる。稀勢の里もそれは重々承知していた。“連敗しなかったのは大きいか”と聞かれると、はっきりと「うん」と答えた。

 6日目時点で全勝が消え、1敗で9人が並ぶのは昨年夏場所以来。初優勝→横綱昇進という綱獲り物語はこれからが本番となる。「今日は今日、明日は明日で、しっかり集中して」。九死に一生を得た男は、再び気合を振り絞る。

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