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【コラム】西部謙司

2ステージ制への「改悪」について

[ 2013年9月19日 06:00 ]

<川崎F・広島>Jリーグの2ステージ制に反対する横断幕をかかげる広島サポーター
Photo By スポニチ

 Jリーグは2015年からの2ステージ制とポストシーズンの導入を決めた。多くのファンが反対しているであろう2ステージ制に踏み切ったのは、とにかく「お金がほしい」という理由につきる。

 20年でJリーグのレベルは上がった。とくにここ数年のレベルアップは著しく、ヨーロッパのごく一部のリーグを除けば、まったく遜色のないところまで来ている。Jリーグはつまらないという意見もあるとは思うが、現在のJ1がつまらないとしたら「サッカーはつまらない」とほぼ同じだ。

 「Jリーグを面白くする」というテーマで、雑誌の座談会に参加したことがある。冒頭、僕は「リーグ戦の8割はつまらないのが普通」と話した。そこはカットされてしまったのだが、9試合あれば7試合はサッカーが好きな人が見ても面白い試合ではない。リーグ戦の試合が全部好試合なんて世界中探してもありはしないのだ。それでも毎週のように観戦するファンは、「つまらなくても見る」という人々である。あるいは、他人にはつまらなくても自分には面白いと思えるから見る、応援する。自分の子供の運動会を見に行くようなもので競技レベルはあまり関係がない。

 現在のJ1の競技レベルは悪くない。しかし、お客さんは増えていない。観客が増えないとお金が足りなくなるので、新規のファンを作るために話題性の高いポストシーズンを導入し、それに大義名分を与えるために2ステージ制というわけだ。

 2ステージに決めたJリーグの人々も、実は1ステージのほうが良いと思っている。2ステージは当面必要なお金のための「改悪」であると知っている。最も懸念されるのは、改悪によって従来のファンにソッポを向かれてしまうことだ。新規ファンがどれだけ増えるかわからない一方、従来のファンが嫌がっている2ステージを押しつけた結果、そこが減ってしまっては元も子もない。つまらなくても足を運んでくれるファンなら、2ステージ導入でも離れることはない、とJリーグ側は信じているのだろう。まあ、そのとおりだと思うけれども、従来のファンには丁寧な説明が必要だ。もう泣き落としなのだが、誠意は見せなければいけない。

 今回の決定は、Jリーグがファンに「借り」を作ったことになる。何ステージになろうがサッカーはサッカーであり、そこに好きなチームの試合があればファンは駆けつける。彼らにとってJリーグは日常の一部だ。一時的なイベントではなく、つまらなくてもレベルが低下しても見続ける、日常に組み込まれたもの。その日常性と相性のいい1ステージ制を切り崩してまで導入する新方式が、それなりの成果を上げてくれることを望むばかりである。(西部謙司=スポーツライター)

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