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【コラム】西部謙司

東アジアカップの収穫は思いのほか少ない

[ 2013年8月8日 06:00 ]

 “Jリーグ選抜”で臨んだ東アジアカップに優勝、フレッシュな選手たちの活躍はJリーグへの興味を高めてくれたと思う。しかし、ザッケローニ監督にとって収穫は意外と少なかったかもしれない。むしろ良くも悪くも頭痛の種が増えたのではないか。

 良い意味で悩ましいのは攻撃陣の活躍だ。FWは層が薄いので、柿谷曜一朗や豊田陽平はすぐに招集される可能性がある。大迫勇也もオーストラリア戦で活躍したが、前田遼一と似たタイプなのでコンビネーションが確立されている前田に取って代わることはないだろう。

 2列目も工藤壮人、山田大記、原口元気、高萩洋次郎、斎藤学が良いプレーを見せた。ただし、ここには香川真司、本田圭佑、岡崎慎司の3人がいて、清武弘嗣と乾貴士も控えていて競争が厳しい。とはいえ、競争があるのは悪いことではない。ザッケローニ監督はメンバー選定にうれしい悩みが増えたといえる。

 一方、守備陣については大きな収穫はなかったと思う。連係が重要な守備は攻撃陣に比べると個人のアピールはしにくいのだが、コンフェデ杯のメンバーを脅かすような選手は現れなかった。森重真人や鈴木大輔はまずまずのプレーぶりだったとはいえ、想定の範囲内だろう。大会MVPの山口螢は招集の可能性が高く、青山敏弘も良いプレーをしたが、遠藤保仁と長谷部誠の鉄板コンビを脅かすほどではない。

 コンフェデ杯での問題は自陣内でのプレーだった。3試合で9失点しているが、大半はクロスボールとDFのミスをきっかけとしたもの。戦術が攻撃的すぎて守備が破綻したわけではない。人数が揃っているのにやられている。カウンターから失点したのはブラジル戦の3点目だけだった。失点が多かったのは戦術的な問題ではなく、たんに守備力が十分でなかったと考えられる。選手を入れ替えないかぎり、強豪国相手には同じように失点すると覚悟してほうがいい。

 東アジアカップで発見したかったのは守備の選手だったはずだ。アタッカーの有力候補が増えたのは喜ばしいが、そこはポジションが埋まっているので大きな変化は起きない。1トップが変わるかどうかぐらいだ。一方、4バックとボランチは変える必要性が高いのに有力候補がいない。東アジアカップは有意義な大会だったが、チームの進歩にはさほどつながらないのではないか。(西部謙司=スポーツライター)

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