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【コラム】西部謙司

サッカーの難しさ バルセロナの危機と逆転

[ 2013年3月17日 06:00 ]

3月12日欧州CLミラン戦で4―0と圧勝し、ベスト8進出を決めたバルセロナ
Photo By AP

 バルセロナがミランを下してCLベスト8へ進出した。第1レグを0-2で落としていたので、バルサの勝ち抜けは困難と思われていたが、終わってみればホームの第2レグは4-0の大逆転劇であった。

 ミランに守りきられた第1レグ、続く国王杯とリーグ戦でレアル・マドリードに連敗したことから「バルサ時代の終焉」とまで報じられていた。しかし、ミラン戦の大勝は不振が一時的なものだということを証明した。

 現在のバルサはピークにある。ピークは終わりの始まりだから、その意味ではバルサの衰退はすでに始まっている。ただし、急に崩壊するわけではない。それはもう少し後になるだろう。

 不振の根本的な原因は「代理監督」にあったと思う。ジョルディ・ロウラ代理監督が悪いというより、「代理」という立場が難局を乗り切るのに適していないのだ。病気療養中のティト・ビラノバ監督の代理である以上、できれば大きな変化は避けたい。ロウラ代理監督はメンバーもやり方も固定し、なかなか不振のチームに手を入れなかった。メッシが疲労し、イニエスタとセスクのポジションが重なり、両サイドバックが同時に上がりっぱなしになるなど、さまざまな問題が生じた。

 代理は暫定とも違う。英国でいう「ケア・テイカー」は、正式な次の監督が決まるまでの“つなぎ”だ が、次にどんな監督が来るかはわからないので大胆な采配も可能だ。その点で代理のほうが制約は大きい。小さな問題が放置された結果、バルサは不振に陥ったが、ようやく必要な手だてが講じられ、ミラン戦の勝利につながっている。

 いくつかの解決可能な問題をクリアしたバルサは、ホームにミランを迎えて通常のレベルに戻っていた。そうなると現在の両チームの力関係からすれば、4-0はありうるスコアであり決して奇跡ではない。むしろ今回の危機はバルサの自作自演といっていいだろう。

 今回のバルサの危機は、サッカーの難しさを物語っていた。あれほどのスーパーチームでも、一時的に「監督」を欠いただけで急降下してしまう。表面化していない小さな問題も放置すればやがて大きな 問題になり、そして、どんなチームでも常に何らかの問題は内包しているわけだ。バルセロナといえども、チームは生き物で、いつもぎりぎりのバランスの上に成り立っている。(西部謙司=スポーツライター)

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