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【コラム】西部謙司

監督解任の危険性

[ 2012年4月11日 06:00 ]

 川崎フロンターレの相馬直樹監督が5節終了時点で解任となった。ここまでの戦績は2勝2分け3敗の11位。好成績とはいえないが、昨季終了時と順位は同じだ。このタイミングでの解任に驚いたファンも多かったと思う。

 相馬監督解任の判断の是非については、事情をよく知らないので何ともいえない。ただ、川崎より下位には7チームもある。すでにセホーン監督を解任しているガンバ大阪を除く6チームにとっては他人事ではないだろう。

 監督解任の決断には個々の事情があるので、それぞれの是非がある。しかし、一般論としていえば監督交代はリスクが大きい。

 チームに問題があって成績が良くないから監督を代えるわけだが、監督を代えたことでさらに問題が増えてしまうケースも少なくないからだ。新しい監督は、前任者の否定から始まる。メンバーの入れ替えや戦術の変更が行われる。微調整ぐらいならいいのだが、大幅な変更となると、今度は新監督のやり方に合わない選手が出てきて、新たな問題が出てくる。

 例えば、前任者がAというプランを立て、それに合った選手起用や補強をしていたとして、次の監督がまったく違うBというプランを掲げると、プランAのための選手が合わなくなってしまう。戦術に合わない選手を使っているのだから、なかなか軌道に乗らない。結果が出なくて、また次の監督を…。こうなると事態は悪化の一途をたどる。

 ドアが開かなくなったからといって、家を建て直したりしない。しかし、サッカーではドアを直さずに家ごと建て替えたくなる人もいる。ヨーロッパでも、今季はインテルやチェルシーが全面改修に失敗した。

 もちろん、どこかで大幅なリフォームや建て替えが必要になるタイミングはあるが、その場合でも前任者からのやり方を継続していったほうがスムーズだ。問題点がわかっているので、そこだけを改修できる。バルセロナはライカールトからグアルディオラに監督交代を行ったタイミングで、ロナウジーニョとデコを放出した。メッシ、イニエスタ、シャビを中心としたチームに変えたわけだが、戦術的な継続性は保たれていて、変更はいわば主要部品の交換である。

 シーズン途中の監督解任はカンフル剤的な効果が期待できるが、それもそんなに長くは続かない。一般論としては、監督交代はできればしないほうがいいし、頻繁な交代はかえって逆効果になる。(西部謙司=スポーツライター)

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