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【コラム】西部謙司

柏レイソルの快挙とJ1の停滞

[ 2011年12月11日 06:00 ]

西部謙司さんの最新刊『欧州サッカー「最強クラブ」伝説』(PHP文庫、本体667円)
Photo By 提供写真

 昨年はJ2、今年はJ1のチャンピオン。柏レイソルの昇格即優勝は世界的にもあまり例のない快挙だった。

 レアンドロ・ドミンゲス、ジョルジ・ワグネルのブラジル人選手の活躍、若手の台頭、中堅やベテランの頑張り、そして見事にまとめ上げたネルシーニョ監督の手腕などが、勝因としてあげられるだろう。柏はガッチリとまとまった好チームで優勝にふさわしいプレーをシーズンを通して維持していた。

 一方で、昇格したばかりの柏に王座をとられたのは、J1トップグループの強化が頭打ちになっているせいかもしれない。名古屋グランパスとガンバ大阪は、ACLとの掛け持ちが響いたのか序盤にエンジンのかかりが悪かった。横浜F・マリノスは柏との天王山で2度負けるなど優勝するにはパワー不足、浦和レッズは残留争いだった。

 J1のレベル自体は上がっていると思う。先頭集団と中位が団子状態で、さほど大きな差がなくなっている。かつては残留第一で手堅いだけだった大宮アルディージャやヴィッセル神戸はプレースタイルが変わり、上位と同じタイプのサッカーを指向するようになった。柏のようにJ2から一気にJ1のトップに立てるのは例外で、昇格組の前にはかなり厚い壁が立ちはだかっている。

 中位以下が伸びているのに対して、トップグループの強化がはかどっていない。G大阪は毎年のように夏場にエースストライカーがカタールへ移籍してしまう。スタジアムが小さく観客動員に限界があるのはネックだ。名古屋はスタジアムもあるし、選手層も厚い。しかし、個々の能力以上のプラスアルファがなく、強いのは確かだが大きな進歩がない。横浜も似たような状態。浦和は強化担当者と監督が定まらずに迷走した。

 実力伯仲は優勝争いが面白くなるが、ACLで優勝できるようなチームが現れないと本当の意味でJリーグが進歩したとはいえない。(西部謙司=スポーツライター)

 西部謙司さんの最新刊が出た。『欧州サッカー「最強クラブ」伝説』(PHP文庫、本体667円)で、1950年代のレアル・マドリード、70年代のアヤックス、90年代のミラン、現在のバルセロナなどについて戦術、中心選手、監督などを解説。欧州CLファンには欠かせない一冊だ。

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