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【コラム】西部謙司

3チームに絞られた優勝争い

[ 2011年10月28日 06:00 ]

 J1も残り4試合、優勝は柏レイソル、ガンバ大阪、名古屋グランパスの3チームに絞られたといっていいだろう。

 柏は今季最大のサプライズだった。J2から昇格したばかり。圧倒的な強さでJ2を制したとはいえ、J1でもここまでやると予想した人は少なかったのではないか。攻守に一体感があり、酒井宏樹や田中順也など若手が急成長した。優勝すればMVPはレアンドロ・ドミンゲスだろう。Jリーグの歴代外国人選手の中でも出色のプレーぶりである。柏の躍進にはアカデミーの成功が下支えになった。ネルシーニョ監督の存在も大きいが、ユースから優れた若手を次々に輩出している。ボトムアップ方式の成功例だ。

 G大阪は爆発的な攻撃力が光る。30試合で71得点はダントツ、2番目の名古屋とセレッソ大阪でも58得点と50点台である。しかも、シーズン半ばでエースのアドリアーノが移籍してこの数字だ。G大阪のブラジル人FWは、半年で2桁得点すると中東へ移籍するのが半ば定番になっている。中東は秋春シーズンなので、G大阪はいつもシーズン途中でエースを引き抜かれる。しかし、さすがにもう慣れたのか、今季は草津からラフィーニャを獲得して大成功を収めた。移籍した時点で得点トップだったアドリアーノよりも、むしろチームにフィットしている。MVP候補は複数いるが、年間を通しての活躍ということでイ・グノだろうか。

 連続優勝を狙う名古屋はバランスのいいチームだ。各ポジションに力のある選手を置いて、いってみれば普通のサッカーをやって普通に勝てるのが強み。ただ、このチームには高さという武器がある。闘莉王、増川、ダニルソン、ケネディがゴール前に居並ぶセットプレーは圧巻だ。この4人は守備のときにもCKやFKを跳ね返す盾となっている。相手のセットプレーをキャンセルし、自分たちには常に切り札があるのはかなり有利だ。高さには好不調の波もない。MVPは得点とアシストの両面でトップのケネディが有力だが、PKの得点も多い。むしろ好調の玉田圭司が相応しいと思う。

 どこが優勝するかはお楽しみだが、注文したいのは来季のACLで優勝だ。この3チームだけでなく、ACLにエントリーしたチームにはぜひ覇権奪回を目指してほしい。その前に、クラブW杯でバルセロナに勝って優勝してくれれば文句はないけれども。(西部謙司=スポーツライター)

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