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【コラム】西部謙司

実力均衡のコパアメリカ

[ 2011年7月15日 06:00 ]

苦しむ優勝候補アルゼンチンのFWメッシ
Photo By AP

 コパアメリカではアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイの苦戦が続いていた。優勝候補の南米3強は、いずれも最初の2試合を引き分けた。アルゼンチン、ウルグアイは何とかグループリーグは通過したものの、両者は準決勝で激突することになってしまった。

 各大陸にはそれぞれの大陸王者を決める大会があるが、近年はどこも強豪国とその他の差が縮まっている。とくにコパアメリカはその傾向があるように思う。もともと南米は弱いチームが強い。戦力的な劣勢をカバーする戦い方に長けているチームが多いのだ。

 70~80年代では、まだコロンビアはブラジルに8-0で負けるようなレベルだった。ベネズエラやチリやボリビアも3強と比べれば明らかに格下のチームにすぎなかった。ところが、80年代あたりからは強化が進み、こうしたかつての弱小国は3強を苦しめるに十分なレベルに達している。

 プレースタイルもそれぞれ個性がある。堅守速攻のパラグアイ、組織的な守備と個人技をミックスさせているコロンビア、ビエルサ前監督が持ち込んだアヤックス戦法が浸透して勤勉な攻撃型というある意味南米らしからぬチリ…。テクニックの上手さと駆け引きの巧みさという下地に、それぞれが組織力を加えている。

 南米に比べると、まだ格差の大きいアジアも急速にその差は縮まっている。カタールでのアジアカップに優勝した日本だが、グループリーグの最初の2試合は負けてもおかしくなかった。アジアは日本、韓国、サウジアラビア、イラン、オーストラリアが5強といわれていたが、カタール大会では中東勢が総崩れでベスト4に1つも残れず。しかし、その前の大会ではイラクとサウジアラビアの決勝でイラクが優勝している。今後は、リーグに資金力のあるカタール、ウズベキスタンが伸びてくるかもしれないし、中国は不正腐敗で上層部が一掃され、本気で強化を始めているという。日本のコーチを招いて指導者講習会を行うなど、かつては考えられなかった(日本を見下していたから)。

 南米の弱小中堅国も、アルゼンチンやブラジルの監督を招いて強化の基礎を築いてきた。ボリビアやベネズエラが、すぐにアルゼンチンやブラジルに並ぶことはないが、サッカーではどうも引き離すよりも追いつくほうが容易なようで、代表チームの実力接近はすでに世界的な流れといえるだろう。

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