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【コラム】海外通信員

オランダ代表の課題 新戦力のプレーに注目

[ 2015年10月4日 05:30 ]

 ヨーロッパでは2016年欧州選手権に向けた予選が大詰めを迎えている。9組ある1次リーグの最後の2節が10月8日から13日に行われる。この2節で1次リーグは終了し、各組の上位2チームが本戦に出場。さらに3位チームの中で最も成績が良い国も本戦へ、残りの各組3位チーム同士が対戦するプレーオフが11月12日から17日にホーム&アウェーで行われ、勝利した4カ国が最後の本戦出場権を獲得する、という日程だ。

 各組を見るとオランダは土俵際に追い詰められている。グループAで現在4位、首位を争っているアイスランドとチェコには勝ち点9差、3位のトルコに勝ち点2差を付けられている。オランダが本戦に出場するためには、残り2試合に勝利し、トルコが勝ち点を落としてくれることを願うしかない。オランダは10月10日にアウェーでカザフスタンと、13日にホームでチェコと対戦する。9月25日に大事な2戦に向けた招集候補メンバーを発表したが、いつも通りに事前に多めの候補を発表、最終メンバーは10月2日に発表される。

 メンバーにはGKシリッセン、MFスナイデル、FWファンペルシー、フンテラール、デパイら常連が名を連ねているが、その中で目を引いたのは新戦力のセンターバック、ヴィルジル・ファンダイク、右サイドバックのリック・カルスドルプ、ウイングのアンワル・エルガジだ。

 ファンダイクはこの夏にセルチックからサウザンプトンへ移籍した。吉田麻也の新たなライバルとして報道された選手でもある。オランダ時代にはフローニンゲンなどに所属し、その後セルチックへ移籍。順調に成長していた。セルチックではFKキッカーとしても知られていたが、不思議といままでオランダ代表には縁がなかった。守備が弱点とされるだけに、ファンダイクに掛かる期待は大きい。

 カルスドルプは昨季からフェイエノールトのトップチームでプレーするようになり、徐々に存在感を高めている。まだ20歳と若いが、今季は本格的に右サイドバックとしてブレイクしている。フェイエノールトのチームメイトでもあるベテランのディルク・カイトも、オランダの全国紙アルへメーン・ダッハブラット紙で評価していた。

 「どんどん良くなっている。彼は驚くべき才能を持った選手だ。多くの人は彼が2年前にフェイエノールトのユースチームで背番号10を付けてプレーしていたことは知らないだろうね。彼は技術があるだけでなく、純粋なスピードもある。パワーに関しても、使うべき時に使うことができる」

 テクニックがあり、攻撃力もある。切れ込んで鋭いミドルシュートを放つこともできる。オランダ代表ではアヤックスの若手右サイドバック・テテが先にデビューしたが、カルスドルプも将来が楽しみなタレントだ。

 最後の一人が、エルガジだ。昨季アヤックスで台頭した2枚看板とも言うべきウインガー。この夏アヤックスからラツィオへと移籍したリカルド・キシュナとともに注目されていた。アヤックスに残ったエルガジは、昨季以上の活躍を見せている。今季エールディビジ第7節終了時点で7ゴール。得点ランクでルーク・デヨング(PSV、オランダ代表)と並んでトップに立っている。

 今回の招集候補に名を連ねたことに、本人はツイッターで喜びを表していた。ただ、エルガジはオランダ生まれのオランダ育ちだが、両親は共にモロッコ人。今回の選出にも本人の決断が必要だった。

 「自分の両親、家族、パーソナルトレイナー、さらにクリスティアーノ・ロナウドもアドバイスしてくれた」とは、アルへメーン・ダッハブラット紙にコメント。5月にC・ロナウドに会った時に相談したという。「彼にはどれくらいオランダを選ぶことに確信があるか聞かれた。彼には、もし彼が自分なら、オランダを選ぶだろうと言っていた。また人々はみんなそれぞれ意見があるだろうが、自分で選ばないといけないと言われた。オランダを選べば、モロッコ人からは本物のモロッコ人ではないと言われるだろう。一方、モロッコを選べばオランダ人から、オランダで生まれ育ったのに、どういうことだ?と言われるよね」

 エルガジはユース時代にすでにオランダ代表としてプレーしている。今回、最終的なメンバーに入れば、完全にオランダ代表を選択した、ということになる。アリエン・ロッベンがケガで不在だけに、エルガジの台頭は希望でもあるのだ。

 ファンペルシー、スナイデルらの世代からの世代交代がスムーズにいっていないというのが現在のオランダ代表の課題。欧州選手権予選を突破はかなり厳しいが、それでも望みを捨てずに1次リーグ最後の2試合に臨む。本戦出場へ可能性をつなぐことができるか。そして、オランダの将来に光明を見いだせるような若手選手たちの活躍があるのか、新戦力のプレーに注目だ。(堀秀年=ロッテルダム通信員)

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