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【コラム】海外通信員

本質を見つめる英国フットボールテレビ番組

[ 2014年7月4日 05:30 ]

イングランド・サポーター
Photo By AP

 W杯ブラジル大会はいよいよ決勝トーナメントに入った。延長戦にもつれ込む熱戦が繰り広げられており、世界中のフットボールファンは連日テレビの前に釘付けとなっている。

 英国でのW杯の放送権はBBCとITVの2局が持っており、日本と同様に地上波で放送されている。両局ともに、各国の元代表選手をゲスト解説者としてキャスティングしており、BBCはティエリ・アンリ、リオ・ファーディナンド、クラーレンス・セードルフ、一方のITVはファビオ・カンナバーロ、パトリック・ビエラらがリオデジャネイロのスタジオから英国に向けて解説している。

 BBCのW杯番組を担当するのは、英国フットボールファンには欠かすことができない長寿番組「Match of the day」の制作チームだ。日本でのプレー経験がある元イングランド代表のガリー・リネカーを司会に据え、ハイライトや試合分析など専門家との意見のやりとりによって番組が進められていく。W杯期間中も、ゲームのカギとなるシーンを切り取る編集は秀逸で、もう一度振り返りたい場面への配慮が行き届いている。同番組のエグゼクティブ・プロデューサーを勤めるフィル・ビッグウッド氏は、プレミアリーグのシーズン中はリネカー氏に自身のデスク前のソファで試合を観戦してもらい、その背後で生放送に向けた台本などを書き上げるそうだ。

 1次リーグ序盤戦、多くの注目を集めたオランダ対スペイン戦でも、ファンペルシーのスーパーゴールだけに焦点をあてずに、左サイドから美しいクロスボールで2アシストを記録したオランダ代表のブリンドの攻守における貢献度を映像として流した。このプレーを解説したアンリは、次のように語っている。「もちろんファンペルシーとロッベンのゴールの素晴らしさは必ず述べなければならないだろう。それは僕らも(解説陣)わかっている。だけれども、個人的には今日の試合のマンオブザマッチは、ブリンドだね。彼が試合でなしとげたことは、ボス(監督)が要求したもの以上のパフォーマンスだったと思う

 「Match of the day」は、1964年から50年間放送されているフットボール番組で、多くの試合が行われる土曜日の夜に放送。映像やコメントをもとにファンやプレーヤーが分析している。近年は放送権料の高騰もあり、プレミアリーグのハイライトの放送権だけでも、年間約100億円にも達するが、BBCは12年に3年間、契約を延長した。

 華美な装飾やセレブリティを招くなど大げさな演出をしないため、退屈で時代遅れという声もあるが、専門家とともに冷静に分析し、視聴者がピッチ内の本質を見逃さない目を養うことができる貴重な番組であることは確かだ。(竹山友陽=ロンドン通信員)

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