塚本ナナミ 米国進出を現実化 「いばらの道を歩んでいます」

[ 2023年4月24日 11:00 ]

愛車とともに撮影に応じる塚本ナナミ
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 【牧 元一の孤人焦点】米国での活躍を目指すレーシングドライバーの塚本ナナミがインタビューに応じ、「いばらの道を歩んでいます」と胸中を明かした。

 最終目標は「フォーミュラ・ドリフト・プロ1」の女性初のシリーズチャンピオン。5月に、その足がかりとなる「ホット・ピット・オートフェス」に初参戦する。

 その準備として、2月から3月にかけて米・西海岸に滞在。サーキットでの初走行、イベントへのゲスト参加、情報収集、人脈作りなどに尽力し、米国進出を現実化した。

 「初めて米国のサーキットで走りましたが日本との状況の違いを感じました。全般的に路面のグリップ感が低く、場所によっては周りが砂漠で路面に砂が舞います。慣れることが大事ですし、車が滑らないように設定を調整する必要があります」

 課題は、大会で使用する競技車。日本から運ぶのは物理的、経済的に難しく、現地で調達する必要に迫られた。

 「米国では左ハンドルの競技車が96%以上を占めます。しかし、2台の車が並んでぎりぎりのところで勝負するドリフトの競技に、私が左ハンドルの車で参加すれば、操作に遅れが生じて事故につながる恐れがあります。右ハンドルの競技車を見つけるのはかなり難しいですが、なんとか間に合うように頑張っています。私は自分の身一つで現地で人脈をつくっていて、大きなレーシングチームが現地の関係者とやりとりしながら準備するのとは訳が違います。日本と米国は国民性も違い、日本から電話やLINE、オンライン会議で現地の人に何か依頼しても、こちらが考えたことの半分以下の成果しか挙がらないこともあります」

 資金調達も課題の一つ。米国進出に当たりスポンサーを募って5000万円を集めようとしているが、容易なことではない。

 「昔と違って、必要な金額を企業に求めるのは難しいです。今は、個人に応援してもらうことに力を入れないといけないと考えています。例えば、1人が1万円出してくれるとするなら、そういう人を5000人集めればいいわけです。今、みなさんに応援してもらえるような座組み、みなさんに夢を与えられるような企画を考えています。もちろん、ドライバーの私が1人でできることではないので、いろいろな専門家の方々と話し合っていこうと思っています」

 米国進出を現実化したとはいえ、極めて険しい道を歩んでいることは間違いない。

 「周りからは『無理だ』『むちゃだ』と言われています。自分でも、なぜそんないばらの道を選ぶのか?と思います。毎日、めげそうにもなります。でも、誰かが道を切り開いていかないといけない。米国のモータースポーツには、ファンが喜ぶものを見せたいというエンターテインメント性があります。ドライバーだけではなくメカニックの人たちにも、観客に見られているという意識の高さがあります。海外での戦いはとても良い経験になります。次の世代にもチャレンジしてもらいたいし、私はその時にお手伝いさせてもらえればいいと思っています。だから今は、めげずに、負けずに前に進みます」

 5月1日に再び渡米し、6日に「ホット・ピット・オートフェス」に参戦する予定。最終目標の「フォーミュラ・ドリフト・プロ1」シリーズチャンピオンへの第一歩だ。

 「大会の関係者は『日本から知らないドライバーが来る。しかも女性だ。大丈夫か?』という感じで待っていると思うので、そういう人たちに、良い驚きを与えたいです。この大会は計5戦で、第1戦は既に終わっているので、残り4戦の中で優勝して、私が米国で活躍しているという情報を日本に届けたいと思っています。日本のみなさんには、塚本ナナミというドライバーを覚えていただき、SNSなどで追いかけていただけるとうれしいです」

 いばらの道での激闘がいよいよ始まる。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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