藤井新竜王 羽生超え最年少4冠!VS豊島4連勝で決めた 将棋界序列トップに君臨

[ 2021年11月14日 05:30 ]

感想戦で対局を振り返る藤井聡太新竜王(代表撮影)
Photo By 代表撮影

 藤井聡太3冠(19)=王位、叡王、棋聖=が13日、山口県宇部市で指し継がれた第34期竜王戦7番勝負第4局に勝利し、19歳3カ月で史上最年少4冠に輝いた。豊島将之竜王(31)を122手までの投了へ追い込み、羽生善治九段(51)が持つ22歳9カ月での4冠を28年ぶりに更新。棋士の序列を示す席次でも初めて、渡辺明王将(37)=名人、棋王の3冠=らを抜いて10代でトップに立った。次は年明けに7番勝負が開幕する第71期ALSOK杯王将戦で5冠目を目指す。

 終局後、宴会場での会見では穏やかな笑みが浮かんだ。興奮も歓喜もなかった対局場とは違う表情。この日は師匠・杉本昌隆八段の53歳誕生日。記者から伝えられ「師匠の誕生日とは、知りませんでした」と藤井は噴き出した。

 8時間あった持ち時間が100手目で残り10分になり、秒読みへ突入した。対する豊島は2時間29分残した。形勢は互角でも、圧倒的不利な状況からうっちゃりを決める。大人に交じって詰将棋解答選手権を中学1年から5連覇した終盤力が、勝負どころで底力を見せた。

 「今期ここまで結果を残せているが、内容的には課題が多い。まだ実感はないが、それに見合う実力をつけていければと思う」

 史上最年少4冠を4勝0敗でかなえた。ストレート負けだけは回避したい豊島が、先手番で繰り出した角換わりの戦型選択。それを打破しての栄冠にも冷静な言葉を連ねた。

 8月、王位戦第5局以降の豊島戦の連勝を7へ伸ばし、対戦成績も13勝9敗とリードを広げた。豊島戦初勝利はまだ1月。初対戦から6連敗し、ロールプレーイングゲームの最後に待ち受けるボスキャラ「ラスボス」的存在だった。今夏以降、王位戦7番勝負、叡王戦5番勝負と続いた両者による「19番勝負」では11勝3敗と圧倒した。

 「今年は序盤に集中的に取り組んでいる。以前よりうまくできたのかなと思う」。加えて、竜王戦での4連勝は09年、渡辺が達成して以来12年ぶり。これら成長の証にも、豊島との対局を通じ「中盤でこちらがうまく指せないと、ペースをつかまれることが多かった。自分の足りないところを感じたシリーズだった」と視線は結果より、対局内容の細部へ向いた。

 全8冠を渡辺、豊島、永瀬拓矢王座(29)と分け合い「4強」と呼ばれた勢力地図を塗り替え、渡辺との「2強」へ時代の針を進めた。そしてタイトル数で渡辺を上回り、10代にして初めて棋界のトップに立った。これまで最年少の席次1位は92年、羽生の22歳3カ月。

 「実感がないというのが正直なところ。身の引き締まる思いです」。涼やかに振り返った、大広間に畳15枚を敷いた宇部市のホテルが、歴史の転換点になった。

 ≪席次1位君臨≫席次とは、ルールに従って決められた棋士の序列のこと。それによって、対局時の上座、下座が決まる。タイトルホルダー同士だと全8冠中、名人と竜王が別格。保持者が別々なら、その他のタイトル数で決まる。今回藤井4冠は最上位の竜王を獲得し、タイトル獲得数が現棋士の中で最多ということで、席次1位に君臨。常に上座に座る権利を得た。

 ◇藤井 聡太(ふじい・そうた)2002年(平14)7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身の19歳。5歳で将棋を始め、10歳で関西奨励会入会。四段昇段(プロ入り)は史上最年少の14歳2カ月。デビュー以降29連勝は史上初。タイトル戦初出場だった20年6~7月の棋聖戦5番勝負で渡辺明棋聖(当時)を3勝1敗で下し、17歳11カ月で史上最年少戴冠。今年1月、将棋に専念するため、名古屋大教育学部付属高を卒業目前で中退。師匠は杉本昌隆八段。

 ◇竜王戦 8タイトルの中で「名人」と並んで最も格が高いとされる。優勝賞金は4400万円で最高。前身の「九段戦」「十段戦」を継承し、発展させる形で1988年創設。連続5期、または通算7期以上保持すると与えられる称号「永世竜王」の資格を持つ棋士は2人で、渡辺明王将と羽生善治九段。

続きを表示

この記事のフォト

2021年11月14日のニュース