【2004年センバツ ダル世代】東北の怪物10年ぶり史上12人目のノーノー 鵜久森の済美が初出場初V

[ 2024年3月16日 07:20 ]

<東北・熊本工>大会史上12人目のノーヒットノーランを達成し、記念のウイニングボールを手にする東北・ダルビッシュ
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 第96回選抜高等学校野球大会(センバツ)は3月18日に開幕する。今大会は一般選考29校、21世紀枠2校、神宮大会枠1校の計32校が選考され、13日間の熱闘を繰り広げる。早春のセンバツは世代を代表するスター選手たちが最上級生で迎える大舞台でもある。「〇〇世代」として春の甲子園を沸かせた選手たちの特集。第9回は2004年の「ダル世代」。(構成 浅古正則)※敬称略

 ■ダルビッシュ有(東北)

 東北初の甲子園制覇を期待されていたのが東北(宮城)。前年夏は準優勝。秋の東北大会も制し、3季連続の甲子園に乗り込んできた。エースはダルビッシュ有。長身から投げ下ろす直球、キレのいい変化球。何より大舞台の経験の豊富さで存在感は群を抜いていた。1回戦は古豪・熊本工。初回先頭打者を失策で出塁させるも三邪飛、三振、三振で抑え込んだ。2回も四球は許すが無安打。3、4回は6連続三振でペースをつかんだ。MAX147キロと抑え気味ながらも8回を無安打。9回2死、最後の打者はスライダーで二直に仕留める。10年ぶり史上12人目となるノーヒットノーラン。打者30人、12奪三振の快挙だった。「記録はたまたまできただけです。感動とかなくて、ただ単にヒットを打たれなかっただけ。自分1人の力だけではありません」

 一冬を越えて人間的にも成長した。この試合で気をつけたのは「審判に態度を出さないこと」。前年秋の神宮大会で判定への不満を態度に出し、高野連から厳重注意を受けた幼さから卒業した。怪物の視界は頂点だけを捉えていた。

 2回戦は大阪桐蔭。ダルビッシュは3番・中村に2本塁打を浴びるなど苦戦も2年生4番・平田良介(05年中日高校生1巡目)を3打数ノーヒットに抑え込み6回を2失点。真壁賢守への継投で競り勝った。準々決勝は初出場の済美(愛媛)。ダルビッシュにとっては嫌な相手だった。前年秋の明治神宮大会。1回戦で対戦し、7失点。コールド負けしている。右肩の疲労が残るダルビッシュは5番・左翼で出場。マウンドは盟友・真壁に託した。8回まで5―2の3点リードも9回、真壁が2点差に詰め寄られた直後にまさかのサヨナラ3ランを被弾。Vの夢は消え去った。「夏にまた来て済美に勝ちたい」といい残しダルビッシュは甲子園を去った。夏も出場したが3回戦で千葉経大付に敗戦。済美へのリベンジは果たせなかった。同年秋日本ハム1巡目。

 ■鵜久森淳志・高橋勇丞(済美)

 準々決勝で東北を撃破した済美は創部3年目、春夏通じて初出場。上甲正典監督は88年センバツで宇和島東(愛媛)を率い初出場初優勝を成し遂げた四国の名将だ。1回戦は5番・左翼の鵜久森の左越え2ランなどで土浦湖北(茨城)に大勝。2回戦ではセンバツに無類の強さを発揮する東邦(愛知)と対戦。高橋の先制打の1点を2年生エース福井優也(2010年広島1位)が守り切り完封勝ちした。東北戦では4番に入った鵜久森が大会2本目となる2ラン。3番・高橋が逆転サヨナラ3ランと大砲2門でダルビッシュの夢を粉砕した。四国対決となった準決勝では明徳義塾(高知)に辛勝。決勝では愛工大名電(愛知)との1点差の接戦を制して創部3年目の初出場初優勝に輝いた。夏も出場し鵜久森の3本塁打などで進撃。決勝まで駒を進めたが駒大苫小牧(南北海道)に打ち負け、春夏連覇はならなかった。同年秋、鵜久森は日本ハム8巡目でダルビッシュと同期入団。高橋は阪神7巡目。

 ■上本博紀(広陵)

 前年の覇者・広陵(広島)は前年秋の中国大会を制し5年連続のセンバツ出場。連覇を目指していた。主将は上本博紀。前年春は1番・二塁。2年生ながら21打数12安打、打率・571で優勝に貢献した。秋季大会後、二塁から捕手にコンバートされ臨んだ大舞台。4打数1安打。東邦相手に1―9の完敗に終わった。「今日の負けで改めて自分らの弱さが分かった。一から出直しです」と上本。夏は広島大会準々決勝で広島商に敗退。甲子園に帰ることはできなかった。早大を経て08年阪神3位。

 ■岩田慎司(東邦)

 エース岩田が強打の広陵打線を6安打1失点。連覇の夢を阻んだ。9回を三振3つで締めた大会屈指の左腕は「きょうはストレートで行ける、走っていると思っていました」と自信満々で語った。2回戦も強打の済美相手に5安打1失点、10奪三振の好投を演じたが打線の援護なく敗れ去った。夏は愛知大会準々決勝で中京大中京に敗退した。明大を経て08年中日5位。

 ■須田幸太(土浦湖北)

 前年秋の関東大会覇者で初出場の土浦湖北は145キロ腕・須田が大黒柱。1回戦の済美戦。頼みの須田は右ひじ痛みを抱えながらの登板となった。13安打9失点の敗戦。「ひじを治してまた戻ってきます」と悔しそうに語ったが、夏は茨城大会3回戦敗退。早大、JFE東日本を経て10年横浜(現DeNA)1位。


 【2004年選抜に届かなかった“ダルビッシュ世代”主な選手(秋季大会成績)】大野奨太(岐阜総合学園=岐阜県大会敗退)陽岱鋼(福岡第一=福岡大会南部準決勝敗退)涌井秀章、石川雄洋(横浜=神奈川県大会3回戦敗退)田沢純一(横浜商大=神奈川県大会準決勝敗退)森福允彦(豊川=愛知県大会敗退)

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