【内田雅也の追球】「四球力」と「法則」「戦術」 小幡の小さなガッツポーズに見た今季の阪神の強み

[ 2023年4月2日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神6ー5DeNA ( 2023年4月1日    京セラD )

<神・D>12回、四球を選んでガッツポーズを見せる小幡(撮影・北條 貴史)
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 試合終了まであと1死の延長12回裏2死一塁で四球を選んだ小幡竜平が右こぶしを強く握りしめた。あの小さなガッツポーズに今季の阪神の強みが映っていた。

 ある種の予感を抱いていると坂本誠志郎が左前打して満塁。近本光司が中堅左を破ってサヨナラ勝利を決めたのだった。
 四球が明暗を分けたとみている。阪神が得点を奪った4イニングのうち3イニングまで四球がからんでいた。

 1回裏は佐藤輝明がフルカウントからファウルで粘り奪った四球がつなぎとなり、新人・森下翔太のプロ初打点を呼んでいた。5回裏は先頭・中野拓夢が四球で出て、三塁強襲、左前に転がる安打で三塁を奪う好走塁もあって佐藤輝の犠飛につながった。そして最後の小幡である。

 監督・岡田彰布も「四球を選べ、と言うてるからな」と認めた。3月26日付の当欄で<脅威の「四球を奪う力」>と書いた。

 打撃コーチ・今岡真訪が「今年は四球が増えると思います」と予言していた。現実にオープン戦で1試合平均四球が12球団最多となっていた。「よく選球眼と言いますが目ではなく、打ちにいって見送れる。タイミングや形がいいからです」。この四球を奪う力が本番になっても続いているわけである。

 一方、投手陣は先発・秋山拓巳の1個を除き、救援7投手が無四球と素晴らしい。制球力はもちろん、打者に向かう姿勢が光り、3回以降10イニングを零封した。

 1回表に大量4点を失いながら、岡田は「1点ずつ返していこう」とあわてなかった。岡田からよく聞かされた話に「4―0の法則」がある。3―0や5―0ではなく4―0なのだ。4点を先取した方はどうしても気が緩む。だから「序盤に4―0となった試合は次の1点をどちらが奪うかで流れが決まる」。この日は1回裏にすぐ得点を返したことで流れを引き寄せていた。

 今年1月18日の12球団監督会議で論議した「引き分け廃止論」について岡田は「引き分けも戦術の一つ」と真っ向反対していた。この日も引き分けも念頭に置き、5失点の秋山を5回まで投げさせ、救援陣、代打陣のやりくり、起用方法を12回まで見通していた。

 なるほど「法則」も「戦術」も確かに生きていた。=敬称略=(編集委員)

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